カンキツ新品種「天香」
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要約
カンキツ新品種「天香」は,「清見」に「アンコール」を交雑して育成したミカンである。アンコール香とオレンジ香を併せたような香があり,肉質が極めて柔 軟・多汁で,食味良好な豊産性の無核品種である。12月下旬~1月上旬に熟する早生カンキツである。栽培適地は西日本の冬期温暖地に限定される。
- 担当:果樹試験場・口之津支場・育種研究室
- 連絡先:成果情報のお問い合わせ
- 部会名:果樹、九州・果樹
- 専門:育種
- 対象:果樹類
- 分類:普及
背景・ねらい
年内に収穫されるカンキツはウンシュウミカンがほとんどであり,品種構成に片寄りがある。そのため,ウンシュウミカンと異なる高品質な早生カンキツが求められている。そこで晩生カンキツのなかで品質が優れている「清見」を母親として用い,それに剥皮が容易で,良香があり,しかも高糖度で食味良好な同じく晩生カンキツである「アンコール」を父親として交雑し,剥皮性があり,芳香のある高品質のマンダリン(みかん)タイプのカンキツの育成を試みた。
成果の内容・特徴
- 昭和49年(1974),果樹試験場口之津支場において,「清見」に「アンコール」を交雑して育成した品種で系統名は「カンキツ口之津17号」である。
- 第7回系統適応性・特性検定試験で検討され,平成8年(1996)8月21日に「天香」と命名され,「みかん農林13号」として登録・公表された。
- 果実は200~250gでやや大果。果形は扁球で果梗部が突出する。果皮は橙色で薄く,やや柔らかくて剥皮は容易である。果面は滑らかである。アンコール香を主体にオレンジ香に似た香がある。熟期は12月下旬から1月上旬で,食味は良い。果肉は橙色で,じょうのう膜が非常に薄く,肉質が極めて柔軟多汁である。無核果がほとんどで,有核果でも種子数は少ない(表1)。単為結果性は強い。
- 樹勢は中程度で,樹姿は開張性。豊産性である。かいよう病に対しては抵抗性が強い。そうか病に対してはウンシュウミカンと同程度の抵抗性を示す。トリステザウイルス(CTV)に対しては罹病性であるが,ステムピッティングの発生度はやや軽い(表2)。
成果の活用面・留意点
- 「天香」は早期結実性が著しく,定植,高接後の早い年限で結実を開始する。したがって,生育初期の樹勢低下がみられるので,肥培管理,摘花(果)等による樹勢の維持・強化を図る必要がある。
- 豊産性で,樹勢も落ちつきやすく,病害抵抗性も強いため,栽培上の大きな問題点は少ない。
- 関東・東海地方では減酸が早いが,味が淡泊で良食味の特徴が十分に発揮されない。しかし中国,四国,九州では食味良好な果実が生産されることから,栽培地帯は西日本に限定されよう。
具体的データ


その他の特記事項
- 研究課題名:中晩生カンキツの新品種育成
- 予算区分:経常
- 研究期間:平成7年度(昭和47年~平成7年)