かんきつ中間母本農5号

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要約

「かんきつ中間母本農5号」は,「リー」と「無核紀州」の雑種である。「リー」に似て減酸が早く品質良好で剥皮性も良い。「無核紀州」より大果である。健 全花粉を持つが,雌性不稔で無核である。「無核紀州」由来の雌性不稔性は遺伝するので,無核品種育成の優良中間母本である。

  • 担当:果樹試験場・興津支場・育種第1研究室
  • 連絡先:成果情報のお問い合わせ
  • 部会名:果樹
  • 専門:育種
  • 対象:果樹類
  • 分類:普及

背景・ねらい

無核または少核であることは,カンキツの優良品種としての必要条件となっている。特に「無核紀州」の持つ雌性不稔による無核性は,近くに花粉を持つ品種を混植しても無核となる有用な性質で,このような強い雌性不稔を示す既存品種は,他に認められない。しかし,「無核紀州」は極めて小果であり,その後代も小果となる傾向が強い。そこで,「無核紀州」の持つ強い無核性を有する中間母本を育成する目的で,「無核紀州」を花粉親とする雑種個体群の育成を行い,早熟でマンダリンタイプの無核個体を選抜した。

成果の内容・特徴

  • 「リー」と「無核紀州」の雑種で(図1),平成8年8月21日に「かんきつ中間母本農5号」として登録・公表された。
  • 花粉は多く,開やくも容易である。花粉稔性率は約95%と高く,発芽率も約87%と高かった(表1)。
  • ナツミカン,ハッサク,ヒュウガナツの混合花粉を受粉しても健全な種子は全く入らなかった。また,自然受粉果でも健全な種子は認められず,「無核紀州」と同様強い雌性不稔性を示した(表2)。
  • 果形は扁球形で果形指数は,118であった。また,果実の大きさは約50gであった。果皮は橙色で果面はやや滑らかである。果皮の厚さは約1.8mmで,剥皮は容易である。じょうのうの硬さは中程度,さじょうは濃橙色で短くて小さく,柔軟多汁である。苦味はない。「無核紀州」と比べ大果で減酸も早い。また,浮き皮にもなりにくい。「リー」と比べ,やや小果であるが,無核であることや,多汁であることなど優れた特性を持っている(表3)。

成果の活用面・留意点

無核紀州の持つ雌性不稔性は,後代に約1/2の確率で遺伝するので,本系統は無核で早熟性の母本として有用である。しかし,キンカンと無核紀州との雑種では,現在のところ雌性不稔個体の出現が認められていないので,属間雑種育成時には注意を要する。

具体的データ

図1.「かんきつ中間母本農5号」の系統図 表1.「かんきつ中間母本農5号」の花粉稔性および発芽率

 

表2.「かんきつ中間母本農5号」にナツミカン、ハッサク、ヒュウガナツの混合花粉を受粉した時の含核数

 

表3.「かんきつ中間母本農5号」の果実形質

 

その他の特記事項

  • 研究課題名:早生カンキツ第6次育種試験
  • 予算区分:経常
  • 研究期間:平成7年度(昭和62年~平成7年