デンプンの糊化特性によるクリ果実の肉質評価法の開発

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要約

クリ果実の肉質の簡易的評価として,Rapid Visco Analyserによるデンプン糊化特性測定を用いて判別することが可能になり,さらにα-アミラーゼの食味への関与が明らかになった。

  • 担当:果樹試験場・育種部・加工適性研究室
  • 連絡先:成果情報のお問い合わせ
  • 部会名:果樹
  • 専門:育種
  • 対象:果樹類
  • 分類:普及

背景・ねらい

クリ果実における食感(肉質)は,ポクポクとした,ねっとりした,べちゃべちゃと水っぽいなどと表現され,物理的味覚として重要な位置づけをされている。しかし,この食感はおいしさを決める大切な要素であるにも関わらず,測定法が確立されていないため,育種の現場では生果実の比重を用いる方法が使われている。クリ果実に多く含まれているデンプンは加熱によってその性質が変化するため,クリ果実の美味しさを測るには肉質に重要な関わりを持つデンプンの性質を測定する必要がある。そして,クリの肉質評価法を確立することは,より美味しいクリ品種を育成したり,品種の特性に合わせた加工法を開発するために有効である。

成果の内容・特徴

  • クリ果実の肉質評価法の確立のため,官能評価の異なる7品種を選び,それぞれのデンプン含量やその性質,加熱による糊化特性値の測定および,デンプン分解酵素であるα-アミラーゼ活性などを分析し,これら分析値と食味評価との関係を解析した(表1)。
  • クリ果実の果肉凍結乾燥粉末を水に懸濁し,粘度測定装置(ラピッドビスコアナライザー)を用いて試料を加熱・冷却させながら粘度測定を行ったところ,α-アミラーゼ阻害剤を加えて測定したときに得られた糊化特性値と蒸しグリの官能評価との間に高い相関が認められた。そこで,クリ果実の肉質の良否をデンプンの糊化特性や粘度曲線から総合的に判別することが可能になった(図1)。
  • 従来の比重法を用いた判定では果実に含有されるデンプン量が多いほど良い肉質であるとされてきたが,「筑波」のようにデンプン量が多くても官能評価の低い品種が認められた。その理由として,加熱加工時におけるα-アミラーゼの作用が食味を決定する重要な要因になることが示唆された。α-アミラーゼはデンプンの糊化に関与する酵素であるため,果実含有デンプン量が多く,かつ酵素活性も高い「利平グリ」のような品種ではねっとりとした食感を与え,評価が高かったと考えられた。

成果の活用面・留意点

クリ果実を蒸煮したときの食味の良否を判別する方法として,良肉質のクリ品種の育成において,官能評価と並んで使用することができる。ただし,甘煮などの加工用途における適用についてはさらに検討が必要である。

具体的データ

表1.官能検査評価点と各測定値との相関係数

 

図1.冷結乾燥クリ粉末のRVA測定曲線

 

その他の特記事項

  • 研究課題名:果実の品質構成要因の解明と評価法の開発
    2.クリ果実の肉質に関わる要因の解明と評価法の開発
  • 予算区分:経常
  • 研究期間:平成7年度(平成7年~9年)
  • 発表論文等:デンプンの糊化特性によるクリ果実の肉質評価,園学雑, 64(別2),1995.