エチレン処理追熟時にエチレン生成が起こりにくいキウイフルーツ系統の発見

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要約

キウイフルーツの果実は,それ自体,追熟しにくいことから,追熟のためのエチレン処理が行われるが,この際にもエチレン生成の起こりにくい系統(AMー203)の存在することが明らかになった。この系統はエチレン生成の増大がないため,追熟果の日持ちが著しく優れている。

  • 担当:果樹試験場・興津支場・加工貯蔵研究室
  • 連絡先:成果情報のお問い合わせ
  • 部会名:果樹、食品
  • 専門:流通利用
  • 対象:キウイフルーツ
  • 分類:研究

背景・ねらい

キウイフルーツの果実は追熟しにくいため,バナナのようなエチレン処理による追熟果実の流通システムの必要性が叫ばれている。しかし,エチレン処理によって美味しくなる反面,このエチレンに反応し,いわゆる自己触媒的にエチレン生成が誘導され,そのエチレンの作用で日持ちが著しく低下する。このことがキウイフルーツの追熟流通システムの普及を妨げている。追熟果実の日持ちを向上させるためには,追熟後のエチレン生成の増大のないキウイフルーツが必要であり,そのような性質を持つ系統の検索を行った。

成果の内容・特徴

  • これまでの調査結果から,既成の品種には近年導入された中国系の品種を含め,自己触媒的なエチレン生成の起こりにくいものがあるものの,その程度は不十分なことが分かっていたので,品種開発途上の交雑実生を収集し,調査を行った。
  • 調査した交雑実生の中から,通常のエチレン処理条件下ではエチレン生成の増大が起こらない系統(香川農試府中分場育成のAM-203)を見いだした(図1)。
  • この系統はエチレン生成は誘導されないものの,エチレンに反応していないのではなく,明らかな呼吸の増大,果肉の軟化,酸の減少が見られ,エチレン処理によって,完熟した(表1)。
  • エチレン生成の増大がないため,エチレン処理による追熟後の日持ちは優れており,15°Cで,他品種よりも著しく長期間(30日以上)可食状態が持続した(表2)。
  • エチレン生成の起こりにくさは自己触媒的な生成のみで,傷害エチレンは他品種とほぼ同様の誘導パターンを示した(データ略)。

活用面・留意点

  • この系統の追熟果の販売では,他品種に比較し,流通,小売り段階での鮮度保持が著しく容易になる。
  • この系統の,桁はずれのエチレン生成の誘導されにくさが年度,気象・栽培条件等が変わっても維持されるかどうかの検討が必要である。

具体的データ

図1.エチレン処理によるエチレン生成の誘導

 

表1.エチレン処理が呼吸量の増加、硬度・酸含量の減少に及ぼす影響 表2.エチレン処理追熟果の日持ち性

 

その他の特記事項

  • 研究課題名:果実における成熟関連エチレン生成系遺伝子の転写メカ
  • ニズムの解明
  • 予算区分:経常
  • 研究期間:平成7年度(平成7年~10年)
  • 発表論文等:自己触媒的エチレン生成の起こりにくいキウイフルーツ系統,園学雑,65(別1):522-523,1996.