アデノシン3リン酸(ATP)含量による黒ボク土ブドウ園の土壌微生物バイオマス測定

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要約

黒ボク土ブドウ園の5月末の土壌微生物ATP含量は,微生物バイオマス窒素量,細菌数,糸状菌菌糸長と正の相関関係を示した。ATP含量と微生物バイオマス窒素量の関係は,土壌管理や時期の違いによって異なった。

  • 担当:果樹試験場・栽培部・土じょう研究室
  • 連絡先:成果情報のお問い合わせ
  • 部会名:果樹
  • 専門:土壌
  • 対象:果樹類
  • 分類:研究

背景・ねらい

土壌微生物バイオマスの測定は,一般に微生物の炭素・窒素量の測定によって行われている。ATP含量による土壌微生物バイオマスの測定では,微生物の生育状況により炭素・窒素量に対するATP含量が変動することから,微生物の炭素・窒素量との関係を明らかにしておく必要がある。そこで,各種土壌管理を行っている黒ボク土ブドウ園から4,5,6,8,10月に採取した土壌の微生物ATP含量[NRB(微生物のATPを特異的に抽出できる界面活性剤)抽出]及び微生物バイオマス窒素量[クロロホルムくん蒸抽出]を測定し,その関係を明らかにした。

成果の内容・特徴

  • 12月に基肥を施用し,12月下旬から3月上旬(1994,1995年は3月下旬)に堆肥施用,ロータリー耕(耕深10cm),敷わらを10年以上継続してきた黒ボク土ブドウ園から,オーガーで土壌を採取した。
  • 1995年5月末に採取した深さ0~20cmの土壌の微生物ATP含量は,微生物バイオマス窒素量(R2=0.8893***),細菌数(R2=0.6862***),糸状菌菌糸長(R2=0.9165***)と正の相関関係を示した(図1)。
  • 1994年4,6,8月,1995年10月に採取した深さ0~10cmの土壌微生物ATP含量と微生物バイオマス窒素量の関係は土壌管理,土壌採取時期によって異なった(表1)。
  • 草生栽培区では,8月の土壌微生物ATP含量も微生物バイオマス窒素量と正の相関関係(R2=0.6765**)を示した(表1)。
  • バーク堆肥施用区では10月,敷わら区では8月に,土壌微生物ATP含量は微生物バイオマス窒素量と負の相関関係(それぞれR2=0.7711**,R2=0.7616**)を示した(表1)。

成果の活用面・留意点

  • 土壌微生物のATP含量とバイオマス窒素量は,土壌微生物バイオマスの指標として異なる性質のものであるが,堆肥施用,敷わら,ロータリー耕を行った後2~3ヶ月後(5月末)に正の相関関係を示し,同様な土壌微生物バイオマスの量的指標と考えることができる。
  • 土壌微生物ATP含量は,有機物施用や耕起などによる土壌環境の不均一さを反映して採取地点による変動が著しいため,統計処理による比較・検討を行う必要がある。

具体的データ

図1.土壌微生物ATP含量と微生物バイオマス窒素量、細菌数、糸状菌菌糸長の関係

 

表1.土壌微生物ATP含量と微生物バイオマス窒素量の相関係数

 

その他の特記事項

  • 研究課題名:果樹園の窒素フローの解明と地表面管理による窒素フロー制御技術の開発
  • 予算区分:一般別枠(物質循環)
  • 研究期間:平成7年度(平成4年~10年)
  • 発表論文等:黒ボク土ブドウ園の各種土壌管理とATP法による微生物バイオマスの変動,日土肥学会要旨,40,1994.黒ボク土ブドウ園における土壌微生物バイオマスと可給態窒素,日土肥学会要旨,41,1995.