リンゴさび果ウイロイド(ASSVd)によるニホンナシ奇形果病(新病害)
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要約
ニホンナシ品種「新高」と「吉野」で発生していた果実の奇形障害は,リンゴさび果ウイロイド(ASSVd)を病原体とする新規の病害であり,その病名をニホンナシ奇形果病と提案した。RT-PCR法による本病原体の検定法を確立した。
- 担当:果樹試験場・保護部・病害第2研究室
- 連絡先:成果情報のお問い合わせ
- 部会名:果樹
- 専門:作物病害
- 対象:果樹類
- 分類:研究
背景・ねらい
1980年代から各地のニホンナシ品種新高と吉野の果実が奇形化する障害が発生していた。本障害は果実以外になんら症状が認められなかった。同じ仁果類のリンゴには同様に果実にのみ発生する病害として,リンゴさび果病,ゆず果病が知られており,リンゴさび果病はリンゴさび果ウイロイドが病原体と確定し,リンゴゆず果病もウイロイドが病原体と推定されている。そこで本障害も,ウイロイドによる病害である可能性があるため,病理学的に研究を進めた。
成果の内容・特徴
- 発症樹の核酸抽出試料を,二次元,2段階,リターンポリアクリルアミドゲル電気泳動によって解析すると,健全樹には見られないウイロイドのバンドが検出された。本ウイロイドは,電気泳動上の移動度,ASSVdcDNAプローブとのハイブリッドの形成などからASSVdと極めて類似のウイロイドであると推定され,塩基配列の解析でも,ASSVdの塩基配列と3カ所でのみ相違が見られるだけであった。また,発症樹の芽をリンゴ品種スターキング・デリシャスに接木接種したところ,リンゴ果実に典型的なさび果病の病徴を発現した。これらのことから,本ウイロイドは,ASSVdであると判明した。
- 本ウイロイドを電気泳動により純化し,切りつけ法により戻したナシ実生と,同様にASSVdを電気泳動により純化し,切りつけ法により戻したリンゴ実生を用いた,戻し接種試験で症状が再現され,本障害がASSVdによる新規の病害であることが確定した。本病をニホンナシ奇形果病と命名することを提案する。
- 簡便な核酸抽出法を用いたRT-PCRによる検定法を確立した(表1)。
- 直接ナイフ切り付け法の試験から,せん定時の刃物による本ウイロイドの伝搬を示唆する結果は得られなかった(表2)。
成果の活用面・留意点
病害として確定したことや病原体の検定法の確立により,高接ぎ等による本病原体の蔓延を防ぎ,ナシの安定生産が可能となる。
具体的データ


その他の特記事項
- 研究課題名:仁果類ウイロイド・ウイルスの宿主特異性遺伝子の構造・機能の解析
- 予算区分:バイテク(病原遺伝子)
- 研究期間:平成7年度(平成元年~8年)
- 発表論文等:
ニホンナシ果実異常発症樹より見い出されたウイロイド,果樹試験場報告,27号,1995.
ニホンナシ果実異常発症樹より見い出されたウイロイドの塩基配列,日本植物病理学会報,61巻3号,1995.(講要)