温州萎縮ウイルスゲノム核酸RNA1の塩基配列の決定
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要約
ウンシュウミカンの重要ウイルスである温州萎縮ウイルスの塩基配列を世界で初めて明らかにした。塩基配列の解析の結果,温州萎縮ウイルスのRNAポリメラーゼ遺伝子は他のウイルスと相同性が極めて低い特殊なものであることが明らかになった。
- 担当:果樹試験場・興津支場・病害研究室
- 連絡先:成果情報のお問い合わせ
- 部会名:果樹
- 専門:作物病害
- 対象:温州みかん
- 分類:研究
背景・ねらい
温州萎縮ウイルスはわが国で発見されたウンシュウミカンの重要ウイルスである。本ウイルスは土壌伝搬することが報告されているが,ベクターは明らかでない。本ウイルスの純化は困難で分子生物学的解析が遅れ,ゲノム核酸の塩基配列は解読されていない。本病防除対策を確立するために,高感度の遺伝子診断法の開発ならびに遺伝子導入による抵抗性個体の作出を行うためにウイルスの塩基配列の解読を行った。
成果の内容・特徴
- 温州萎縮ウイルスのゲノム核酸RNA1およびRNA2のうちRNA(約7000塩基)の3’末端の3116塩基の塩基配列を決定した。
- 解析の結果,決定された部分はRNAポリメラーゼ遺伝子であることが明らかになった。
- このRNAポリメラーゼ遺伝子はネポウイルスやコモウイルス属のウイルスと相同性が極めて低く,温州萎縮ウイルスが特殊なウイルスであることが明らかになった(図)。
成果の活用面・留意点
本研究をもとに温州萎縮ウイルスの分子進化に関する知見が増大すれば,本ウイルスのカンキツに対する病原性の進化の解明ならびに高感度な遺伝子診断法を確立することが期待できる。RNAポリメラーゼ遺伝子をカンキツへ組み込むことにより,温州萎縮ウイルスに対する抵抗性を付与することが可能となる。
具体的データ

その他の特記事項
- 研究課題名:温州萎縮ウイルスグループ及びカンキツタターリーフウイルスの遺伝子機能の解析
- 予算区分:病原遺伝子
- 研究期間:平成7年度(平成7年~10年)
- 発表論文等:
Nucleotide sequence of the 3'-terminal region of RNA1 of satsuma dwarf virus. Ann. Phytopathol. Soc. Jpn.62:4-10(1996).
Nucleotide sequence of the coat protein genes of citrus mosaic virus. Virus Res. 42:181-186(1996).
温州萎縮ウイルスの分子進化,植物感染機構の進化を考える(露無慎二編),平成7年度植物感染生理談話会(日本植物病理学会発行),1995.