東アジアにおけるミカンハモグリガの寄生バチ相

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要約

日本,台湾及びタイから,34種のコバチ類がミカンハモグリガの寄生バチとして確認された。各地の優占種はSympiesis striatipesとQuadrastichus sp.(以上日本),Ageniaspis citricolaCitrostichus phyllocnistoides(以上台湾),A.citricolaQuadrastichus sp.(以上タイ)であった。

  • 担当:果樹試験場・興津支場・虫害研究室
  • 連絡先:成果情報のお問い合わせ
  • 部会名:果樹
  • 専門:作物虫害
  • 対象:果樹類
  • 分類:研究

背景・ねらい

ミカンハモグリガは高接ぎ樹,若木及び施設栽培ミカンの重要害虫である。また,被害痕がカイヨウ病の侵入口となる。これの防除には,5~10日間隔の殺虫剤連続散布で対応しているが,薬剤の連用は薬剤抵抗性害虫出現,他害虫のリサージェンス,環境に対する影響などの諸問題が生じている。さらに最近は,新大陸やヨーロッパ,アフリカなど従来発生していない地域への本種の分散が起こり,これらの地域でも,薬剤によらない防除法の導入が求められている。このような時期に当たり,本種の生物防除法の研究は重要であり,その基材となる天敵類の種類,分布,特徴などの情報を提供する必要がある。

成果の内容・特徴

  • 日本からは23種の寄生バチが発見されたが,本土では Sympiesis striatipes が最も多く,Quadrastichus sp.がこれに次いだ。 また,南西諸島ではCitrostichus phyllocnistoides が優占種であった(表1)。
  • タイからは17種が得られ,Quadrastichus sp. が最も優占し,Ageniaspis citricola がこれに次いだ。また台湾からは9種でA. citricola とC. phyllocnistoides が優占した(表1)。
  • これらの内,S. striatipes,Quadrastichus sp. は3齢以上の発育の進んだ幼虫に寄生し,C. phyllocnistoides も比較的大型の寄主に寄生する。これに対して,A. citricola は卵-幼虫寄生者である。
  • 我が国で,ミカンハモグリガの死亡率はしばしば90%以上に達し,これに寄生バチが大きく寄与していると思われるが,それでも,ミカン ハモグリガの被害は甚大で,一般管理園でも毎年夏季新葉のほぼ100%が加害される。これに対して,タイでは被害葉率10%程度の園が多く見られ,これら の園では,A. citricola の寄生率が高い。このハチがミカンハモグリガの最重要天敵と推定された。

成果の活用・留意点

A. citricola はすでにタイからオーストラリア,さらにフロリダに導入され,定着した。我が国にも導入を試みる必要がある。

具体的データ

表1.日本、台湾及びタイのミカンハモグリガから羽化した主要寄生バチ

 

その他の特記事項

  • 研究課題名:ミカンハモグリガの発生生態と被害に関する研究
  • 予算区分:経常
  • 研究期間:平成7年度(平成元年~7年)
  • 発表論文等:
    タイにおけるミカンハモグリガの寄生性天敵,応動昆,36,1992.
    日本及び台湾におけるミカンハモグリガの寄生蜂,果樹試報,27,1995.
    中・北部タイにおけるミカンハモグリガの寄生蜂の種類と寄生率,付日本,台湾及びタイ産ミカンハモグリガ寄生蜂の検索表,果樹試報(投稿中).