リンゴわい性台木新品種「JM8」

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要約

「JM8」は,マルバカイドウに「M.9」を交雑して育成されたリンゴわい性台木新品種である。挿木繁殖が比較的容易で,「M.9」相当ないしやや強いわ い化能力,高生産効率を有し,多収性で,高品質果実生産が可能である。耐水性は「M.26」相当の弱さであるが,根部疫病には比較的強いことから,わい性 台木の利用が可能なリンゴの栽培地帯全域への普及が期待される。

背景・ねらい

リンゴの省力生産の推進のためには,わい性台木を利用したわい化栽培が必要である。しかし,現在使用されている「M.9」や「M.26」等のわい性台木は繁殖性や耐病虫性が劣ることから,挿木繁殖が可能で生産力が優れるわい性台木品種の育成を試みた。

成果の内容・特徴

  • 昭和47年にマルバカイドウ「セイシ」に「M.9」を交雑して育成された交雑種である。育成された実生について根の皮部率60%以上,挿し木発根率50%以上を目安として選抜を進め,昭和59年に注目個体として選抜された。昭和60年から系統番号「リンゴ台木盛岡8号」としてリンゴ台木第1回系統適応性検定試験に供試された。平成6年度の系統適応性検定試験成績検討会においてその優秀性が確認され,平成7年度の同検討会において新品種候補に決定,平成8年8月21日付けで農林登録された。
  • 樹勢は中程度で,樹姿は開張性と直立性の中間を呈する。耐水性は「M.26」と同程度に弱い(データ省略)。挿木の活着率は76%とマルバカイドウよりやや劣るが実用的には問題は少なく,挿木による繁殖が可能である。挿木によって発生した新梢は直立し,生育良好で,1シーズンで台木として使用可能な大きさに達する。根部疫病,ACLSV,ASPV,斑点落葉病,黒星病,リンゴワタムシに抵抗性を示す(表1)。
  • 本系統は「M.9」相当ないしやや強いわい化能力を有する。「ふじ」との接木親和性は中~良で台勝ちを呈する。生産効率は「M.9EMLA」や「M.26EMLA」より明らかに高く,かつ他の候補系統にもまさっており,多収性である(表2)。
  • 本系統を台木として用いた場合の「ふじ」の果実重は対照台木の「M.9EMLA」や「M.26EMLA」を用いた場合と大きな差はないが,玉揃いはやや優れている。硬度と糖度は対照台木よりやや高く,着色は中~良で,果実品質は優れている(表3)。

成果の活用面・留意点

挿木繁殖が比較的容易なわい性台木として利用できる。耐水性はやや弱いが根部疫病には比較的強く,わい性台木の利用が可能なリンゴの栽培地帯全域への普及に適すると考えられる。苗木の定植に当たっては「M.9」や「M.26」と同様に倒伏防止のための支柱が必要である。

具体的データ

表1.「JM8」の病害虫抵抗性

 

表2.「ふじ」の生育並びに結実に及ぼす影響(平成7年度)

 

表3.「ふじ」の果実品質に及ぼす影響(平成6年~7年度平均)

その他

  • 研究課題名:リンゴ台木第1回系統適応性検定試験
  • 予算区分:経常
  • 研究期間:平成7年度(昭和60年~平成7年)