良食味・黄色のリンゴ新品種候補「リンゴ盛岡52号」

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要約

リンゴ新品種候補「リンゴ盛岡52号」は、「ふじ」に「はつあき」を交雑 して育成した中生系統である。黄色リンゴであり、さびが多くて外観が劣り、収穫前落果もやや多いという欠点を有するが、既存の中生品種と比べて良食味で、日持ち性が優れている。

  • 担当:果樹試験場・リンゴ支場・育種研究室
  • 連絡先:成果情報のお問い合わせ
  • 部会名:果樹
  • 専門:育種
  • 対象:果樹類
  • 分類:普及

背景・ねらい

リンゴでは中生の基幹品種を欠いており、早急にそれを育成する必要がある。そのため、生食・加工兼用種として優れている「はつあき」と主要経済品種である「ふじ」等との交雑を行ない、果実品質が優れ、生産力の高い中生の優良品種育成を試みた。

成果の内容・特徴

  • 昭和51年(1976)に「ふじ」に「はつあき」を交雑して育成した。512の個体番号で調査を行ない、昭和61年(1986)に中生の優良系 統として一次選抜した。平成元年(1989)から「リンゴ盛岡52号」の系統名で、リンゴ第4回系統適応性検定試験に供試した。平成5年度の成績検討会からその優秀性が注目され、平成8年度の同検討会において新品種候補にふさわしいとの結論が得られた。
  • 樹勢は中程度で、樹姿は開張性を呈する。短果枝の着生は中、腋花芽の着生は多である。「はつあき」と「世界一」を除く一般栽培品種との交雑和合性は高く(表3)、豊産性である。収穫前落果がやや多い。主要病害の中で、斑点落葉病には抵抗性、黒星病には罹病性である。
  • 盛岡における成熟期は10月中旬で、「千秋」より約1週間遅く、「ゴールデン・デリシャス」より1週間早い。大きさは通常250~270g前後である。果皮色は黄であるが、陽光面は淡紅に着色する。果形は扁円で、さびの発生が多く、外観は劣る。年により、梗あ部に裂果を生じる場合がある。糖度(Brix)は15~16%で高く、リンゴ酸含量は0.5g/100ml前後を示し、甘酸適和で食味は濃厚である。日持ち性が優れており、貯蔵可能期間は常温で15日、冷蔵で90日前後である(表1)。
  • 地帯別特性調査結果をみると、成熟期は長野で9月下旬、東北北部で10月上中旬、北海道で11月上旬となっている。糖度は13~15%、酸度は0.4~0.5g/100ml前後で、食味良好と評価する場所が多かった。一方、収穫前落果がやや多いこと、果面にさびの発生が多く、外観をそこねることが欠点として指摘されている(表2)。

成果の活用面・留意点

本系統は黄色リンゴで、さびが多く外観は劣るが、食味がよく、日持ち性に優れている。東北北部で10月上中旬に収穫できる黄色の実用品種はないことから、本系統の存在は有効なものと考えられる。収穫前落果がやや多いことから、収穫遅れにならないように注意する必要がある。落果防止剤の適用が認められれば、散布する方が望ましい。

具体的データ

表1 リンゴ盛岡52号の特性調査結果

表2 盛岡52号の地帯別特性調査結果

表3 盛岡52号の交雑和合性

その他

  • 研究課題名:リンゴ第4回系統適応性検定試験
  • 予算区分 :経常
  • 研究期間 :平成8年度(平成元年~8年)