極わい性のリンゴ台木新品種候補「リンゴ台木盛岡5号」

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要約

リンゴ台木新品種候補「リンゴ台木盛岡5号」は、マルバカイドウに「M.9」を交雑して育成したリンゴ極わい性台木である。挿木繁殖が可能で、「M.9」より強いわい化能力を有し、耐水性は比較的強い。糖度の高い高品質果実が生産できる。樹勢が弱いので、肥沃地での普及が期待される。

背景・ねらい

リンゴの省力生産の推進のためには、わい性台木や極わい性台木を利用した低樹高栽培が必要である。しかし、現在使用されている極わい性台木の「M.27」は繁殖性や耐病虫性が劣ることから、挿木繁殖が可能な極わい性台木品種の育成を試みた。

成果の内容・特徴

  • 昭和47年(1972)にマルバカイドウ「セイシ」に「M.9」を交雑して育成した。育成した実生について根の皮部率60%以上、挿し木発根率50%以上を目安として選抜を進め、昭和59年(1984)に優良系統として選抜した。昭和60年(1985)から系統番号「リンゴ台木盛岡5号」としてリンゴ台木第1回系統適応性検定試験に供試した。平成7年度の系統適応性・特性検定試験成績検討会においてその優秀性が確認され、平成8年度の同検討会において新品種候補にふさわしいとの結論が得られた。
  • 樹勢は弱く、開張性を呈する。耐水性は比較的強い。挿し木活着率が85%と比較的高く、挿し木による繁殖が可能である。挿し木によって発生した新梢は直立し、生育良好で、1シーズンで台木として使用可能な大きさに達する。ひこばえが発生しやすい。根部疫病、ASPV、斑点落葉病、リンゴワタムシに抵抗性で、黒星病には中程度の抵抗性を示す(表1)。
  • 樹は「M.9」や「M.26」を台木に用いた場合より小さく、極わい性である。「ふじ」との接木親和性は中で、台勝ちを呈する。生産効率は場所により異なるが、比較的多収性を有すると考えられる (表2)。
  • 本系統を台木として用いた場合の「ふじ」の果実重は場所により異なるが、対照台木の「M.9EMLA」や「M.26EMLA」よりやや劣る傾向が認められる。硬度と糖度は対照台木より10%程度高く、着色は中~良で、果実品質は優れる(表3)。

成果の活用面・留意点

本系統は極わい性の台木で、挿し木繁殖性が比較的高い。高密植栽培用の台木として利用可能で、高糖度で品質の優れた果実の生産が期待できる。極わい性台木であることから、土壌肥沃地における強樹勢品種の台木として適すると考えられる。
挿し木苗にひこばえが発生しやすいので、定植前に除去する必要がある。高接病ウイルスのACLSVに感受性であることから、接穂にはACLSV無毒のものを用いる必要がある。苗木の定植に当たってはM.9やM.26と同様に倒伏防止のための支柱が必要である。

具体的データ

表1 「リンゴ台盛岡5号」の病害虫抵抗性

表2 「ふじ」の生育並びに結実に及ぼす影響

表3 「ふじ」の果実品質に及ぼす影響

その他

  • 研究課題名:リンゴ台木第1回系統適応性検定試験
  • 予算区分 :経常
  • 研究期間 :平成8年度(昭和60年~平成8年)