比重を利用した廉価なモモ果実糖度の非破壊推定法
※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。
要約
消費者の高級品指向に応えるため果実糖度の非破壊推定法が実用化されているが、装置が高価であるなどの問題点がある。音響式体積計と天秤により測定した果実比重から糖度を推定する、格段に低コストなモモ糖度非破壊推定技術を開発した。
- 担当:果樹試験場・栽培部・気象生態研究室
- 連絡先:成果情報のお問い合わせ
- 部会名:果樹
- 専門:食品品質
- 対象:果樹類
- 分類:普及
背景・ねらい
モモ果実の糖度を非破壊で推定することは、消費者の高級品指向に対応し、販売戦略上意義深いため、すでに近赤外線を用いる方法が実用化されている。しかし装置が非常に高価であること、測定部位が果実の一部であることなどの問題点がある。そこでモモ果実の比重と糖度の関係から新しく安価なモモ果実の非破壊糖度推定技術の開発を行い、非破壊糖度推定の普及、低コスト化を図る。
成果の内容・特徴
- 天秤により果実重量を、音響式体積計(VM-100,計測科学研究所製作)により果実体積を非破壊測定し、比重を(重量/体積)として求める音響式体積計は上から果実にかぶせるだけで精度よく体積が得られ、ラインに組み込むことも可能である。
- 第1図に示したように糖度と比重は、非常に強い相関関係が認められる。したがってこの関係の回帰式をあらかじめ求めておけば、比重から精度よく糖度を推定することができる。
- 糖度と比重の関係は品種により異なるため、品種ごとに回帰式を求めておく必要がある。
- 糖度の実測値と推定値の誤差(標準誤差)は「ゆうぞら」で0.464、「白鳳」で0.784、 「あかつき」で0.526、「あきぞら」で0.685、「黄金桃」で0.518 であり、従来法である近赤外線推定法と同程度である。
- 相関係数は非常に高く「ゆうぞら」で0.940、「白鳳」で0.848、 「あかつき」で0.853、「あきぞら」で0.891、「黄金桃」で0.882 である。
- 近赤外線照射測定装置は数百万~数千万円で販売されているが、天秤および音響式体積計は各数十万円であり、非常に廉価である。
成果の活用面・留意点
廉価であるため、ラインに組み込み果実選果場への普及が期待される。同じ品種でも産地が異なると、回帰式が異なる場合もあり得るので、その場合は事前に、数個の果実を使って回帰式を求める必要がある。明らかな未熟果や過熟果は回帰式からはずれるため(第1図F)収穫時に注意が必要である。
具体的データ

その他
- 研究課題名:果樹の生育モデルの開発
- 予算区分 :経常
- 研究期間 :平成8年度(昭和63~平成12年)
- 発表論文等:モモ果実糖度の比重を利用した非破壊推定、園芸学会雑誌、第65巻別冊1、1996。