着色容易な黒色・大粒のブドウ新品種候補「ブドウ安芸津9号」

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要約

ブドウ新品種候補「ブドウ安芸津9号」は「巨峰」に「301-1」(巨峰×ナイアベル)を交雑して育成した4倍体の大粒の黒色ブドウである。11g程度の果粒重となり「巨峰」より着色容易である。

  • 担当:果樹試験場・カキ・ブドウ支場・育種研究室
  • 連絡先:成果情報のお問い合わせ
  • 部会名:果樹
  • 専門:育種
  • 対象:果樹類
  • 分類:普及

背景・ねらい

わが国で最も生産量の多いブドウは「巨峰」であり、大粒であることと食味が優れることから広く栽培されている。しかし、「巨峰」は成熟期が高温となる暖地では十分に黒色に着色せず、しばしば赤熟れ果と称する不十分な着色となって商品価値を下げている。そこで、より着色性が優れる大粒ブドウの育成を図った。

成果の内容・特徴

  • 昭和50年(1975)に果樹試験場安芸津支場(現カキ・ブドウ支場)において「巨峰」に「301-1」(「巨峰」×「ナイアベル」)を交雑して育成した4倍体の系統である。
  • 昭和58年(1983)から平成2年(1990)まで系統番号「安芸津9号」としてブドウ第4回(寒冷地向き)系統適応性検定試験(系適)において北海道と北東北4県における適応性について検討を行ったが、キャンベル・アーリー等と比較して耐寒性が劣るため、試験を中止した。平成4年(1992)から、他の大粒ブドウ系統と共に全国17か所の場所において行ったブドウ第8回系統適応性検定試験において検討を続けた結果、平成10年(1998)1月の同試験成績検討会において新品種候補として適当であるとの結論を得た。
  • 樹勢は「巨峰」と同等で強い。「巨峰」と同様の防除を行えば、目立った病害の発生は認められていない。花振るい性は「巨峰」よりやや少ない。
  • 収穫期は「巨峰」とほぼ同時期である(表1、2)。果粒重は「巨峰」よりやや小さく、平均11g程度である(表1)。果皮色は紫黒色であり、「巨峰」と比べて容易に黒く着色する。系適を実施した15か所の場所において果皮色を比較した結果、平均カラーチャート値は「巨峰」が8.6であったのに対し、「安芸津9号」は10.0であり、着色が優れた。果肉特性は「巨峰」と同じで、崩壊性と塊状の中間であるが、果肉硬度は「巨峰」よりやや硬い。糖度と酸含量は「巨峰」とほぼ同様である。香気はフォクシー香を呈する。裂果性は極めて小さい。日持ち性も「巨峰」とほぼ同等である。「巨峰」よりもやや皮ばなれがしにくい。また、「巨峰」より脱粒しにくい。

成果の活用面・留意点

南東北以南の「巨峰」栽培地域で栽培可能である。暖地においても「巨峰」より容易に黒色に着色する。

具体的データ

表1.育成地(広島県安芸津)における「ブドウ安芸津9号」の特性

表2.各場所における「ブドウ安芸津9号」の特性

その他

  • 研究課題名:ブドウ第2次育種試験、ブドウ第8回系統適応性検定試験
  • 予算区分 :経常研究期間 :平成9年度(昭和50年~平成9年)
  • 研究担当者:山根弘康、山田昌彦、栗原昭夫、永田賢嗣、佐藤明彦、吉永勝一、平川信之、岩波 宏、松本亮司、小澤俊治、角 利昭、平林利郎、角谷真奈美、岸 光夫、中島育子