結実性が良く黄緑色で大粒のブドウ新品種候補「ブドウ安芸津19号」

※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。

要約

ブドウ新品種候補「ブドウ安芸津19号」は「紅瑞宝」に「オリンピア」を交雑して育成した4倍体の黄緑色ブドウである。果粒は9g程度の大粒で、高糖度である。「巨峰」よりも結実性良好で栽培性に優れている。

  • 担当:果樹試験場・カキ・ブドウ支場・育種研究室
  • 連絡先:成果情報のお問い合わせ
  • 部会名:果樹
  • 専門:育種
  • 対象:果樹類
  • 分類:普及

背景・ねらい

わが国で生産されている黄緑色ブドウは「ネオ・マスカット」、「マスカット・オブ・アレキサンドリア」などであるが、その生産量は少ない。ブドウの消費を拡大するため「巨峰」のように大粒で、食味の良い黄緑色のブドウの育成を図った。

成果の内容・特徴

  • 昭和55年(1980)に果樹試験場安芸津支場(現カキ・ブドウ支場)において「紅瑞宝」に「オリンピア」を交雑して育成した4倍体の系統である。
  • 平成4年(1992)から系統番号「ブドウ安芸津19号」として、全国34か所の場所においてブドウ第8回系統適応性検定試験を行って検討を続けた結果、平成10年(1998)1月の同試験成績検討会において新品種候補として適当であるとの結論を得た。
  • 樹勢は「巨峰」と同程度で強い。「巨峰」と同様の防除を行えば、目立った病害の発生は認められていない。「巨峰」より花振るい性が小さく、結実性が良好で、容易に350~450gの有核の良房を得ることができる。
  • 収穫期は「巨峰」とほぼ同時期である(表1、2)。果皮の色は黄緑色である。果粒重は9g程度であり、「巨峰」よりやや小さく、「ネオ・マスカット」より大きい。果粒形は短楕円である。裂果性はほとんどない。果肉特性は「巨峰」と同様の崩壊性と塊状の「中間」である。糖度は「巨峰」より高く、育成地では21%である。酸含量は「巨峰」と同様の0.5g/100ml程度である。やや未熟な果粒の香気はマスカット香に近いが、成熟が進むとフォクシー香に近い特有の香がある。脱粒は「巨峰」よりしにくい。日持ち性は5日程度で短い。皮ばなれのしやすさは「巨峰」と同程度である。

成果の活用面・留意点

東北南部から九州にいたる広い範囲で栽培可能であるが、耐寒性も強く、東北地方北部の一部地方にも適応する。収穫時期が遅れると、果粒と他物あるいは果粒同士の接触部の果皮が褐変する場合があるので、適期収穫に努める必要がある。

具体的データ

表1.育成地(広島県安芸津)における「ブドウ安芸津19号」の特性

表2.各場所における「ブドウ安芸津19号」の特性

その他

  • 研究課題名:ブドウ第2次育種試験、ブドウ第8回系統適応性検定試験
  • 予算区分:経常研究期間 :平成9年度(昭和55年~平成9年)
  • 研究担当者:山根弘康、山田昌彦、佐藤明彦、吉永勝一、平川信之、岩波 宏、栗原昭夫、永田賢嗣、小澤俊治、角 利昭、平林利郎、角谷真奈美、中島育子