中生で良食味のカンキツ新品種候補「カンキツ口之津19号」

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要約

カンキツ新品種候補「口之津19号」は、育成系統「清見×アンコールNo.2」に「マーコット」を交雑し、育成したタンゴールである。大果で肉質は柔軟・多汁、芳香があり、高糖度で食味良好な少核品種である。2月に成熟する中生のカンキツである。

背景・ねらい

晩生カンキツの「アンコール」、「マーコット」は高糖度で高品質であるが、我が国においては、その優れた特性を露地栽培では十分発揮できず、ほとんど加温ハウスによる施設栽培によっている。

そこで単胚、無核、雄性不稔性を有する高糖度の中生の育成系統である「清見×アンコールNo.2」を母親とし、「マーコット」を父親として交配し、露地栽培が可能で、早熟、無核、高糖度のタンゴールタイプの高品質カンキツを育成しようとした。

成果の内容・特徴

  • 昭和59(1984)年、果樹試験場口之津支場(現カンキツ部口之津)において、「清見×アンコールNo.2」に「マーコット」を交雑して育成した系統である。昭和61年にウンシュウミカンに高接ぎし、平成元年に初結実した。平成2年に一次選抜し、平成3年からカンキツ第7回系統適応性・特性検定試験で検討した。
  • 果実は200~280gの大果で、果面は平滑、果形は腰高の扁円形で整っている。果皮は橙~濃橙色で、厚さは薄く、剥皮性はやや容易。アンコールあるいはマーコット類似の中位の芳香がある。熟期は2月で、糖度は12~13%で食味良好である。果肉は濃橙色で、じょうのう膜は薄く、肉質は柔軟多汁である。種子数は0~5個程度で少ない。単為結果性が強い(表1)。
  • 樹勢は中~やや弱で、樹姿は中~開張である。結実性は良好で連年結果する。そうか病、かいよう病に強い。カンキツトリステザウイルス(CTV)に対しては罹病性であり、ステムピッティングの発生度は高い(表2)。

成果の活用面・留意点

  • 「口之津19号」は外観、果実品質ともに良好で、豊産性で樹勢も落ち着き栽培しやすい。しかも、これまでの主要な施設栽培用品種である「アンコール」、「マーコット」より早熟で、ほぼ無核化された改良系統である。
  • 樹勢がやや弱いため、適正着果に留意し、肥培管理を徹底することにより、樹勢の維持・強化を図る必要がある。

具体的データ

表1.各場所における「カンキツ口之津19号」の果実特性(1996)

表2.各場所における「口之津19号」の樹性(1996)

その他

  • 研究課題名:カンキツ第2次育種試験、カンキツ第7回系統適応性・特性検定試験
  • 予算区分  :経常
  • 研究期間  :平成9年度(昭和59~平成9年)
  • 研究担当者:松本亮司、山本雅史、國賀 武、吉岡照高、三谷宣仁、奥代直巳、山田彬雄、浅田謙介、池宮秀和、吉永勝一、内原 茂、生山 巖、村田広野