ニホンナシのS遺伝子型の解析に有効なS遺伝子ホモ接合体の同定

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要約

S遺伝子ホモ接合体はS遺伝子型の解析に有効であり「長十郎」の自殖から選抜した「312-9」及び「312-6」が、それぞれS2ホモ接合体及びS3ホモ接合体であることを確認した。これらの、S遺伝子ホモ接合体を用いると、S遺伝子型解析を簡便に行うことができる。

  • 担当:果樹試験場・育種部・ナシ・クリ育種研究室
  • 連絡先:成果情報のお問い合わせ
  • 部会名:果樹
  • 専門:育種
  • 対象:果樹類
  • 分類:研究

背景・ねらい

自家不和合性遺伝子型(S遺伝子型)の解析は、偏父性不和合性に基づいた後代検定によって行われてきたが、この方法ではS遺伝子型が明らかになるまで、長年月と多くの労力が必要である。そこで、短期間にS遺伝子型解析を行う方法を検討した。

成果の内容・特徴

「長十郎」自殖個体群からS2またはS3ホモ接合体として選抜された「312-9」及び「312-6」の花 粉をS遺伝子型既知の品種・系統に交雑し、両ホモ接合体のS遺伝子型を確認した。また、これらホモ接合体を用いて、「豊水」のようなS遺伝子型が未確定ま たは未知品種のS遺伝子型を簡便に解析できることを実証した。

  • 「312-9」はS2遺伝子を有し、遺伝子型の異なる品種・系統とは不和合性を示し、S2遺伝子を持たない品種・系統とは和合性を示したことから、S2ホモ接合体であることが確認された。
  • 「312-6」はS3遺伝子を有し、遺伝子型の異なる品種・系統とは不和合性を示し、S3遺伝子を持たない品種・系統とは和合性を示したことから、S3ホモ接合体であることが確認された。
  • 「豊水」と「312-6」(S3S3)の交雑では不和合性を示し、さらに、「豊水」と「長十郎」(S2S3)の交雑で和合性を示すことから、「豊水」はS3遺伝子を1つ有することが確認された。このように1例ではあるがS3ホモ接合体を用いて、簡便にS3遺伝子の有無が判定され、S遺伝子型分析に有効であることが明らかになった。

成果の活用面・留意点

このホモ接合体2系統に加え既に、S4sm遺伝子ホモ接合体が育成されており、今後さらにS1、S5、S6、S7などのS遺伝子ホモ接合体シリーズの育成が完成すると、ニホンナシのS遺伝子型解析が短期間に、かつ少労力で効率よく行うことが可能となる。

その他

  • 研究課題名:ニホンナシの自家不和合性遺伝子の解析
  • 予算区分:経常
  • 研究期間:平成9年度(平成8年~10年)
  • 研究担当者:寺井理治、齋藤寿広、西端豊英、壽 和夫
  • 論文等:ニホンナシのS遺伝子ホモ接合体の育成と、それを用いたS遺伝子型の解析、園芸学会雑誌、第64巻別冊1、1995。