音響式体積計を利用したブドウ果実糖度の非破壊推定技術

※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。

要約

ブドウの房の比重と糖度との間には高い相関関係があることを明らかにした。音響式体積計を利用した比重測定に基づくブドウの非破壊糖度推定装置を開発した。これまで困難だったブドウの糖度推定が、低コストかつ小さい誤差で可能となった。

  • 担当:果樹試験場・栽培部・気象生態研究室
  • 連絡先:成果情報のお問い合わせ
  • 部会:名果樹
  • 専門:食品品質
  • 対象:果樹類
  • 分類:普及

背景・ねらい

果実の糖度を非破壊で推定することは、販売戦略上重要であり、すでに多くの樹種で近赤外線を用いる方法が実用化されている。しかし、ブドウではその形状の 特殊性から近赤外線法を用いることが難しく、実用化されていない。そこでブドウ果実において、形状を選ばない比重による非破壊糖度推定技術の適合性を検討 し、音響式体積計を利用した非破壊糖度推定技術を開発する。

成果の内容・特徴

  • 穂軸、果柄を含む房全体についてブドウ房の比重(音響式体積計指示値/重量)と全粒を圧搾して得た果汁の糖度(Brix)は、高い相関関係が認められた(図1、2)。相関係数は、‘巨峰’は0.913、‘キャンベルアーリー’は0.899であった。糖度(Brix)の実測値と推定値の誤差(標準誤差)は‘巨峰’で0.503、‘キャンベルアーリー’で0.431と実用的な範囲である。
  • 糖度推定を行う場合は、電子天秤により房重量を計測し、音響式体積計(VM-100、計測科学研究所製作)により房体積を計測して比重を求める。この値をあらかじめ品種ごとに求めておいた回帰式に入力して推定糖度を求める。
  • ブドウは選果機によらず手動で選果することが一般的であるので、図3のような測定プローブを用いて一房ごとに計測する(図4)。
  • この方法ではブドウ全粒の平均糖度を得られる。

成果の活用面・留意点

  • 近赤外線法に比べ廉価であるため、選果場での実用化が期待される。
  • 回帰式は品種により異なり、また産地で異なる場合もあるため、20房程度の果実の比重および糖度をこの装置で実測し、回帰式を修正する。回帰式の修正は選果現場でも容易である。

具体的データ

図1.‘巨峰’の糖度(Brix)と比重の関係図2.‘キャンベルアーリー’の糖度(Brix)と比重の関係

図3.糖度推定装置のプローブ部分図4.糖度推定装置の全体図

その他

  • 研究課題名:果樹の生育モデルの開発
  • 予算区分:経常
  • 研究期間:平成9年度(昭和63~平成12年)
  • 研究担当者:杉浦俊彦、伊藤大雄、黒田治之、平林秀規(長野中信農試)
  • 発表論文等:なし