カンキツトリステザウイルス抵抗性育種素材として有望な「サンキツ」

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要約

サンキツはカンキツトリステザウイルス(CTV)に感染するが、ウイルスの増殖程度が低く、また、強毒ウイルスによっても生育阻害がみられないので、CTV抵抗性育種素材として有望である。

  • 担当:果樹試験場・カンキツ部・遺伝資源研究室
  • 連絡先:成果情報のお問い合わせ
  • 部会名:果樹
  • 専門:育種
  • 対象:果樹類
  • 分類:研究

背景・ねらい

CTVは世界のカンキツ栽培地帯に広く分布し、虫媒伝染性でかつ被害が大きいために各国でその対策に苦慮している。恒久的な対策は抵抗性品種の開発であ る。カラタチは強いCTV抵抗性遺伝子を持ちCTVに対し免疫性を示すが、その雑種後代からは食用となるものが得にくいために、食用品種の開発には使い難 い。そこで、食用品種育成に有用な抵抗性育種素材の探索を行った。

成果の内容・特徴

  • 予備実験によって選抜したサンキツ、‘トロビタ’オレンジ及びサワーオレンジの実生苗に病原性の異なる7種類のCTV分離株を接ぎ木接種し、ポリ クローナル抗体を用いたエライザによる吸光度測定から、保毒対照サンプルのCTV濃度を100とする相対濃度を求めた。また、CTV接種苗の新梢の伸長状 態と主幹部のステムピッティング発生度を調査した。
  • 各品種において分離株の間に増殖程度の差異が認められ、また、いずれの分離株についても品種間に増殖程度の差異が認められた。CTVの増殖程度は個々の品種と分離株の組合せで決まることが明らかになった(表1)。
  • その中でサンキツは供試したいずれの分離株についてもウイルス濃度が低く、また、ステムピッティングの発生がなく(表2)、生育阻害がみられなかった(表3)ことから、CTV抵抗性品種の育種素材として有用である。

成果の活用・留意点

  • サンキツはCTVに耐病性の台木及び栽培品種の育成のための素材として利用できる。栽培品種を目標とする場合、果実が小さく酸含量が高いので、実用品種との交配を重ねて中間母本を育成する必要がある。
  • サンキツの持つCTVに対する耐病性の遺伝関係はまだ明らかでない。

具体的データ

表1.特性の異なるカンキツ品種における接種から15か月後の新葉中助のCTV相対濃度

表2.ステムピッティング発生度

表3.新梢の伸長状況(接種から23か月後)

その他

  • 研究課題名:トリステザウイルス免疫性カンキツの育種素材化
  • 予算区分:経常
  • 研究期間:平成9年度(平成8年~12年)
  • 研究担当者:吉田俊雄
  • 発表論文等:病原性の異なるカンキツトリステザウイルス分離株を接種したカンキツ品種におけるウイルス濃度及び生育の差異、園芸学会雑誌、第66巻別冊2、1997。