中晩生の高品質リンゴ新品種候補「リンゴ盛岡56号」

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要約

リンゴ新品種候補「リンゴ盛岡56号」は、「ふじ」に「はつあき」を交雑して育成した中晩生系統である。果皮は濃赤色で着色が優れ、外観良好である。芳香があり、甘く、食味良好である。果実はやや小さいが、豊産性である。

  • 担当:果樹試験場・リンゴ支場・育種研究室
  • 連絡先:成果情報のお問い合わせ
  • 部会名:果樹
  • 専門:育種
  • 対象:果樹類
  • 分類:普及

背景・ねらい

リンゴでは中生の基幹品種を欠いており、早急にそれを育成する必要がある。そのため、第4次リンゴ新品種育成試験においては、生食・加工兼用種として優れている「はつあき」と主要経済品種である「ふじ」等との交雑を行ない、果実品質が優れ、生産力の高い中生の優良品種育成を試みた。

成果の内容・特徴

  • 1976年に「ふじ」に「はつあき」を交雑して育成した。 601の個体番号で調査を行い、1986年に中生の優良系統として一時選抜した。 1991年から「リンゴ盛岡56号」の系統名で、リンゴ第4回系統適応性検定試験に供試した。 1993年度の系統適応性検定試験成績検討会からその優秀性が注目され、 1997年度の同検討会において新品種候補にふさわしいとの結論が得られた。
  • 樹勢は強く、樹姿は開張性を呈する。短果枝の着生が多く、腋花芽の着生も多い。「ぐんま名月」、「秋映」、「新世界」とは交雑不和合であるが、それらを除く一般栽培品種との交雑和合性は高い (表3)。早期落果及び収穫前落果は少なく、豊産性である。主要病害の中で、斑点落葉病には抵抗性、黒星病に対しては罹病性である。
  • 盛岡における成熟期は10月下旬で、「ジョナゴールド」とほぼ同時期である。大きさは通常250g前後で、「ふじ」よりやや小さい。果形は円、果皮色は濃赤で美麗であるが、スカーフが発生しやすい。果面にさびの発生はない。年により、梗あ部に小さな裂果が生じる場合がある。糖度(Brix)は14~15%でやや高く、リンゴ酸含量は0.4g/100ml前後を示し、甘酸適和で芳香を有し、食味は優れている。日持ち性は「ふじ」より劣るが、貯蔵可能期間は普通貯蔵で25日、冷蔵で70日前後である(表1)。
  • 地帯別特性調査結果をみると、成熟期は長野で10月中旬、東北北部で10月中下旬、北海道で11月上旬となっている。果実の大きさは183~346gである。着色が優れ、多くの場所で外観良好と評価された。糖度は13~15%、酸度は0.3~0.4g/100ml前後で芳香があり、食味良好と評価する場所が多かった。一方、果梗部に小さな裂果が生じる場合があることと、やや小玉であることなどが欠点として指摘された。生産力は「中~高」と評価する場所が多く、比較的豊産性を有すると思われる (表2)。

成果の活用面・留意点

  • 本系統は濃赤色に着色し、外観と食味が優れ、リンゴの主要生産地帯で 10月中~下旬に収穫できる高品質品種として有望と考えられる。
  • 「ふじ」よりはやや小玉であることから、摘果は早目に行う必要がある。また、貯蔵性は「ふじ」より劣ることから、収穫遅れにならないように注意する必要がある。

その他

  • 研究課題名:リンゴ第4回系統適応性検定試験
  • 予算区分:経常
  • 研究期間:平成9年度(平成元年~9年)
  • 発表論文等:なし