M.9EMLA台リンゴ樹の物質生産力の品種間差異とその推定

※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。

要約

わい性台木M.9EMLAを用いた植栽6年目のリンゴ樹の乾物生産量および分配能は 品種によって異なる。しかし、品種に関わらず、開花前の幹周測定値から 年間の全乾物生産量または果実乾物重を推定することができる。

  • 担当:果樹試験場・リンゴ支場・栽培生理研究室
  • 連絡先:成果情報のお問い合わせ
  • 部会名:果樹
  • 専門:栽培
  • 対象:果樹類
  • 分類:研究

背景・ねらい

日本では、リンゴわい性台木としてM.26台木が最も多く利用されているが、肥沃な土壌では生育が旺盛となりすぎるため、 M.26台木よりわい化度の強いM.9台木が注目されている。一般に、同一台木を用いても土壌条件や穂品種などによって樹の大きさは異なる。そこで、6品種をM.9EMLA台木に接ぎ木し、樹齢6年目の樹の乾物生産量、器官別分配率および樹冠構造を比較検討し、超省力的生産技術の開発の基礎資料を得る。

成果の内容・特徴

  • 樹の全乾物生産量は、「ふじ」が多く、次いで「ゴールデン・デリシャス」、「王林」、「祝」、「国光」、「さんさ」の順となり、「ふじ」と「さんさ」の間に約2倍の差が認められる (表1)。
  • 果実へは、「ふじ」、「王林」で30~35%が配分されたのに対し、「祝」では17%しか分配されず、品種間で大きな差が認められる(図略)。
  • 開花前の幹周測定値と樹の全乾物生産量(図1) または果実乾物重(図略)との間には、 6品種全体でも有意な正の相関関係が認められる。
  • 樹の全乾物生産量と果実乾物重との間には、 6品種全体でも有意な正の相関関係が認められる(図略)。
  • 葉乾物重当たりの乾物生産量および果実乾物重との間には、有意な正の相関関係が認められ(図2)、その両方の値が高い品種ほど果実への乾物生産の分配率が高い傾向が認められる。
  • 以上のことから、台木にM.9EMLAを用いた場合、樹の乾物生産量および器官別分配率について品種によって差異があると判断された。また、6品種全体でも開花前の幹周値と樹の全乾物生産量または果実乾物重との間に相関関係があることから、開花前の幹周の測定により、当年の乾物生産、果実乾物量の推定が可能と考えられる。

成果の活用面・留意点

M.9EMLA台木を用いる場合、樹の物質生産力についての基礎的知見として活用できる。本結果は、北東北(盛岡)における湿性黒ボク土からのデータであり、他の土壌条件等によるデータの収集が必要である。

具体的データ

表1.乾物生産量に及ぼすM.9EMLA台木の影響

 

図1.春季幹周と乾物生産量との関係

 

図2.葉乾重当たりの果実乾物重および全貌物重との関係

その他

  • 研究課題名:カラムナータイプ等の乾物生産および分配能の解明
  • 予算区分:連携開発研究(超省力園芸)
  • 研究期間:平成9年度(平成9年~12年)
  • 発表論文等:M.9EMLA台木リンゴ樹の乾物生産とその分配の品種間差異、園芸学会雑誌(印刷中)。