糖度が高く無袋栽培に適する中生のモモ新品種「なつおとめ」

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要約

モモ新品種「なつおとめ」は、「あかつき」に「よしひめ」を交雑して育成した中生品種である。果皮の着色は良好で無袋栽培適性を有し、果肉は白色で肉質はしまり糖度が高く良食味である。

背景・ねらい

モモの栽培においては、果実品質が優れ無袋栽培の可能な早生から晩生に至る品種の育成が求められている。そのため中生で品質の優れる「あかつき」に果実肥大が優れ熟期のやや遅い「よしひめ」を交雑し、大玉で外観・品質の優れた新品種を育成することを試みた。

成果の内容・特徴

  • 1984 年(昭和 59 年)に「あかつき」に「よしひめ」を交雑して得られた実生から育成した。昭和 62年に個体番号「209-21」を付して定植し、同年に初結実し平成2年に注目個体として選抜した。平成4年から系統番号「モモ筑波 111号」としてモモ(生食用)第7回系統適応性検定試験に供試した。平成 10年度落葉果樹系統適応性・特性検定試験成績検討会において新品種候補にふさわしいとの合意が得られた。
  • 樹勢は中程度、樹姿は開張性と直立性の中間となる。新梢の発生は多く、花芽の着生も多い。花は単弁桃色で花粉を有し自家結実性である。開花期は「あかつき」と同時期かやや早い。収穫期は「あかつき」より1週間程度おそい中生品種である。生理落果の発生は少ない。
  • 果形は扁円形で果実重は 230~300gとなり「あかつき」より大果となる。果皮の地色は白色、着色はぼかし状でやや多く、玉揃いも比較的良好で外観は優れている。果面の裂果、肌荒れは見られない。果肉は白色、溶質でしまり、肉質の粗密はやや密で繊維はやや多い。核周囲の紅色素は多く、果肉内の紅色素も年により多い。核は粘核である。果汁の糖度は高く、「あかつき」とほぼ同程度となり、酸味は少ない。渋味の発生は認められない。果実外観が良好で食味が優れ、「あかつき」よりも果実肥大が良好であることが本品種の大きな特徴である(表1、図1)。

成果の活用面・留意点

  • 東北地方から九州までのモモ栽培地域で栽培が可能である。収穫期は「あかつき」の1週間程度後、「よしひめ」の4~5日前となるので、中生の高品質品種のシリーズ化に有効であると思われる。
  • 花芽が多く、結実も極めて良好なので大玉果生産のため摘蕾摘花等早めの結実管理が必要である。樹上での日持ち性も良好であるが、収穫が遅れた場合には果肉内にみつ症状が発生し、褐変することがあるので適期収穫を心がける。せん孔細菌病の発生が認められるので対策が必要である。また、灰星病にも罹病性なので防除が必要である。

具体的データ

表1 「なつおとめ」の果実特性

図1 「なつおとめ」の結実状況

その他

  • 研究課題名:モモ(生食用)第5次育種試験、第7回モモ系統適応性検定試験
  • 予算区分 :経常
  • 研究期間 :平成 10 年度(昭和 59 年~平成 10 年)
  • 研究担当者:吉田雅夫(宇都宮大農学部)、京谷英壽(北農試)、山口正己、中村ゆり、西村幸一(山形県立園試)、土師 岳、三宅正則(山梨県果樹試)、八重垣英明、小園照雄、福田博之(弘前大農学部)、木原武士、鈴木勝征