カンキツのリモニンの苦味をなくするグルコース転移酵素遺伝子の単離
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要約
カンキツのリモニンの苦味消失に関与するリモニン:UDP-グルコース転移酵素遺伝子 cDNA クローンを、成熟期の「宮川早生」から単離した。この遺伝子を利用することで、カンキツのリモノイドグルコシド含量を増やす育種の可能性がある。
- 担当:果樹試験場・カンキツ部・育種技術研究室
- 連絡先:成果情報のお問い合わせ
- 部会名:果樹
- 専門:育種
- 対象:果樹類
- 分類:研究
背景・ねらい
カンキツの苦味成分の1つであるリモノイドは、抗がん活性等の機能性を持つことが明らかになりつつある。普通温州等では、リモニン前駆体のA環ラクトンにグルコースが結合した苦味のないリモニングルコシドが多量に形成されるためリモニン含有量が少なく、果汁が苦味を呈しない。この配糖体形成を触媒するリモニン:UDP-グルコース転移酵素 (LGT) 遺伝子を単離、解析することで、抗がん活性等の機能性に富むカンキツ類の育種素材の開発をめざす。
成果の内容・特徴
- カンキツの主要な機能性成分で苦味の原因の1つであるリモニンを苦味のないグルコシドへ転換する LGT 遺伝子 cDNA クローン(CitLGT) を、成熟期の「宮川早生」のアルベド由来の cDNAライブラリーから単離することに成功した。この遺伝子から推定されるアミノ酸配列には、UDP-グルコース転移酵素の N 末端ドメインと同結合ドメインだけは保存されているが、その他の領域は新規なものであった(図1)。
- このクローン (CitLGT) をプローブとしたサザン分析により、カンキツゲノムにはこの遺伝子が単一コピーであり(図2)、ンキツの多種類のリモノイドグルコシドの生成に関与すると推定された。果実における転写活性は、リモノイドグルコシドの増加と並行して上昇することが確認され(図3、4)、この遺伝子がウンシュウミカン等における自然の苦味消失の遺伝子制御のキーになることが示された。
- この研究は日米共同研究の成果である。
成果の活用面・留意点
高度にリモニングルコシドを産出するカンキツを育種するために、この遺伝子の組換えカンキツを作成し、カンキツ植物体での遺伝子発現の解析を進めることができる。
具体的データ
その他
- 研究課題名:カンキツのリモノイド転換酵素遺伝子の単離と解析
- 予算区分 :バイテク育種
- 研究期間 :平成9年度(平成6~9年)
- 研究担当者:大村三男、森口卓哉、稲垣(遠藤)朋子、松本亮司(育種研究室)、
喜多正幸(東京農工大学)、Shin Hasegawa(USDA)
- 発表論文等:1)一部は、第 25 回国際園芸学会、日本育種学会 92 回講演会、園芸学会平成 10 年度 秋季大会で発表。1999 年アメリカ化学会シンポジウム発表。
2)UDP-D-グルコース:リモノイドグルコシル転移酵素遺伝子(特許出願準備中)。