トリヨード安息香酸(TIBA)によるカンキツ「清見」の生理落果調節
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要約
「清見」の落果はトリヨード安息香酸(TIBA)の処理位置により促進・抑制されることが明らかになった。生理落果期に IAAの極性移動阻害剤である TIBA を離層より果実側に処理することで落果は促進され、枝側に処理すると抑制される。また、促進される場合には離層中IAA 濃度の顕著な上昇がみられる。
- 担当:果樹試験場・カンキツ部・形質発現研究室
- 連絡先:成果情報のお問い合わせ
- 部会名:果樹
- 専門:生理
- 対象:果樹類
- 分類:研究
背景・ねらい
カンキツ類では結実の制御が古くからの課題である。着果・落果には植物ホルモンが関与していることが知られており、なかでも IAA の広範な作用が知られている。そこで、生理落果期に離層とその前後の組織(図1)に IAA の極性移動阻害剤である TIBA(トリヨード安息香酸)を処理し、各組織の IAA 濃度と生理落果の関連を検討した。
成果の内容・特徴
- 生理落果(一次落果)のピークの前に 10mM の TIBA を離層より果実側の果梗部に処理することで落果は促進され、枝に処理することで抑制された(図2)。
- 落果を促進する果梗部への TIBA 処理や対照区では離層中 IAA 濃度の顕著な増加がみられた(図3)。
- これらの結果から離層より果実側の果梗部における IAA の極性移動抑制が落果を促進すること、並びに離層の IAA 蓄積が落果に関連することが示唆された。
成果の活用面・留意点
- 明らかになった2つの現象(TIBA の処理位置による落果に対する相反する作用、落果に先行した離層中 IAA 濃度の顕著な増加)は落果機構を解明する上で有用な情報になる。
- 機作の異なる他の抗オーキシンについても同様の現象が存在するか確認する必要がある。
具体的データ
その他
- 研究課題名:カンキツの生理活性物質による結実制御技術の開発
- 予算区分 :特別研究(開花結実制御)
- 研究期間 :平成 10 年度(平成7年~ 10 年)
- 研究担当者:奥田 均、平林利郎
- 発表論文等:1.カンキツ類の生理落果におけるオーキシン濃度勾配説を支持する状況証拠 , 園芸学会雑誌, 65(別2), 18-19, 1996.
2.Effect of IAA gradient between the peduncle and branch on physiological drop of citrus fruit (Kiyomi tangor), Journal of Horticultural Science & Biotechnology, 73(5), 618-621, 1998.