炭酸ガス施用によるカンキツ「不知火」(「デコポン」)の樹勢強化と品質向上

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要約

施設栽培のカンキツ「不知火」(「デコポン」)は、春季の炭酸ガス施用(1,250~2,000ppm)により新梢・新葉の生育が促進され、樹勢が強化される。同時に、着果率が高まる。また、春季に加え秋季にも炭酸ガスを施用することにより、果実品質が向上する。

  • 担当:果樹試験場・カンキツ部・栽培生理研究室
  • 連絡先:成果情報のお問い合わせ
  • 部会名:果樹
  • 専門:栽培
  • 対象:果樹類
  • 分類:指導

背景・ねらい

カンキツ「不知火」(「デコポン」)は果実品質が優れるものの、結実開始後に発生する新梢 が細く樹勢が弱りやすい特徴を持っており、安 定生産のための樹勢強化技術が望まれている。また、樹勢の衰えた樹で生産される果実は酸度 が高く問題となっている。そこで、「不知火」の樹の生育及び果実 品質に対する炭酸ガス(CO2)施用の効果を検討した。

成果の内容・特徴

  • 施設栽培「不知火」において、発芽から着果・結実の期間にあたる春季に CO2 を施用することにより新梢・新葉の成長が促進される( 表1 、 2 )。すなわち、節間が長くなり、新しく展開する葉は大きく厚くなる。また、新葉の緑化が早 まり、生理落果が抑制され着果率・着果程度が向上する。
  • 「不知火」の果実は、春季に加え果実生長の盛んな秋季にも CO2 施 用することにより品質が向上する( 表3 )。すなわち、果皮色の赤みが増し、糖度が高く、酸度は低くなる。

成果の活用面・留意点

  • CO2 施用技術は、施設栽培「不知火」の樹勢強化に有効である。なお、加 温ハウスにおいて CO2 施用する場合は、明け方に窓を閉め切って施用し、高温に なる前に換気する。
  • 春季のみの CO2 施用では、果実品質は向上しない。
  • 本研究に用いた「不知火」は、ウィルス・ウィロイド無毒化処理を実施していな い。

具体的データ

表1 人工気象室内でCO2施用した「不知火」の新葉の生長、花数および着果率

表2 CO2施用した加温ハウスにおける「不知火」の生育及び着果程度

表3 春季および秋季に人工気象室内でCO2施用した「不知火」の果実品質

その他

  • 研究課題名:CO2 施肥が樹勢及び果実品質に及ぼす影響
  • 予算区分 :国県共同
  • 研究期間 :平成 10 年度(平成8年~ 11 年)
  • 研究担当者:藤澤弘幸、高原利雄、緒方達志、小野祐幸
  • 発表論文等:Carbon dioxide enrichment improved tree vigor and quality of fruits in ‘Shiranuhi' mandarin, Suppl. J. Japan. Soc. Hort. Sci., 67(1), 39, 1998.