植物生育調節剤の重複散布によるカンキツの着花促進
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要約
夏秋季のエチクロゼート3回散布、冬季のジベレリン生合成阻害剤2回散布は、ともにウンシュウミカン及びポンカンの花芽形成を促進し、翌春の着花数を増加する。エチクロゼートとジベレリン生合成阻害剤の重複散布により着花数はさらに増加する。
- 担当:果樹試験場・カンキツ部・栽培生理研究室
- 連絡先:成果情報のお問い合わせ
- 部会名:果樹
- 専門:栽培
- 対象:果樹類
- 分類:指導
背景・ねらい
カンキツの着花性は極めて不安定で、そのことが露地栽培の隔年結果やハウス栽培における着 花不良等の原因となり、安定生産の阻害要因と なっている。高品質果実を安定生産するためには、着花管理技術の確立が不可欠である。そこ でエチクロゼート及びジベレリン生合成阻害剤(ウニコナゾール、 パクロブトラゾール)の連続散布並びに重複散布によるカンキツ類の花芽形成促進効果を検討 した。
成果の内容・特徴
- 高接ぎ2年目の「中野3号」ポンカン珠心胚実生への秋季( 10 月上旬~ 11 月上旬) エチクロゼート 200ppm 3回散布、及び4年生「木村早生」への夏秋季(7月下旬~9月上旬)エチクロゼート 100ppm 3回散布により、着花数が増加し新梢数は減少した( 表1 、 表2 )。
- 高接ぎ当年の「中野3号」ポンカン珠心胚実生への秋冬季( 11 月中旬~ 12 月 下旬)ウニコナゾール 1,000ppm 3回散布により、着花数が増加した(データ略)。高接ぎ2年目の「中野3号」ポンカン珠心胚 実生への冬季( 12 月中旬~1月下旬)パクロブトラゾール 1,000ppm 2回散布、及び4年生「木村早生」への冬季( 12 月下旬~1月下旬)パクロブトラゾール2回散布により、着花数が増加し新梢数は減少した( 表1 、 表2 )。
- ポンカンでは秋季のエチクロゼート 200ppm 3回散布と、冬季のパクロブトラゾ ール 1,000ppm 2回散布を重複処理すると、単剤の連続散布より更に着花促進効果が高まっ た( 表1 、 表2 )。
成果の活用面・留意点
- エチクロゼート散布により発根が抑制され易いため、連年散布を行うと樹勢が衰弱する おそれがあるので注意が必要である。
- 晴天が続き土壌が乾燥している場合には、エチクロゼートの利用は必要ない。夏 秋季に降雨が多く果実肥大、品質低下、発根が多いと予想される条件で利用する。
- カンキツでエチクロゼート2回散布、パクロブトラゾール1回散布は農薬登録さ れているが、着花促進としてのエチクロゼート3回散布、パクロブトラゾール及びウニコナゾ ール2回散布は登録されていない。
具体的データ
その他
- 研究課題名:カンキツにおける花芽形成安定化技術の開発
- 予算区分 :特別研究(開花結実制御)
- 研究期間 :平成 10 年度(平成7年~ 10 年)
- 研究担当者:高原利雄、緒方達志、児下佳子、藤澤弘幸
- 発表論文等:植物生育調節剤の重複散布によるカンキツの着花促進,園学九州研究集録,6,21-22,1998.