カキ成木樹の非光合成器官における呼吸消費量
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要約
カキ成木樹の非光合成器官の呼吸量を測定した。生体重当り呼吸量は細根が最も高く、枝や根では径が小さいほど高い。全樹体の器官別呼吸量は、太枝、果実、1年枝、太根で 総呼吸量の 70% 以上を占めるが、この割合に対する温度の影響は小さい。
- 担当:果樹試験場・カキ・ブドウ支場・栽培生理研究室
- 連絡先:成果情報のお問い合わせ
- 部会名:果樹
- 専門:生理
- 対象:果樹類
- 分類:研究
背景・ねらい
カキをはじめとして果樹は樹齢が高くなるにつれて、非光合成器官の占める割合が大きくなる ことが特徴の一つであり、光合成産物のかなり の量が呼吸によって消費されていることがうかがえる。したがって、高品質果実生産のために は非光合成器官の呼吸による光合成産物の消費量を明らかにして、 光合成産物の効率的転流・分配のための樹体制御法を開発する必要がある。そこで、カキの成 木樹における非光合成器官の呼吸量を測定し、地下部も含めた樹体 単位の光合成産物の呼吸による消費量を推定した。
成果の内容・特徴
- 生体重当たりの呼吸量を比較すると、地上部では1年枝>小枝>中枝≒太枝>果実の順 に高く、地下部では細根>小・中根≒太根の順であった。いずれの器官も温度の上昇により呼 吸量は増大した。全器官の中で細根の呼吸速度が最も大であった( 図1 )。
- 枝及び根の径と生体重当たりの呼吸量の関連をみると、枝、根とも径が小さいほ ど呼吸量は高くなる傾向がみられた( 図2 )。
- 樹体当たりの器官別呼吸消費量は生体重によって異なり、総生体重の大きい器官 の呼吸量が大であり、太枝、果実、1年枝、太根で非光合成器官の総呼吸量の 70% 以上を占 めた( 図3 )。樹体の総呼吸量は温度によって大きく変化し、25°Cから 32°Cに上昇すると総呼吸量は約 40% 増加した。しかし、各器官の呼吸量が総呼吸量に占める割合はほぼ一定しており、温度 による影響は少なかった(データ略)。
- カキ「富有」の成木において、樹冠の光合成速度は相対照度等によって変化する が、光合成作用によって取り込まれた炭酸ガスは、特に高温時である夏秋季にはかなりの量が 、非光合成器官の呼吸上昇によって消費され、物質生産への影響が大きいことが推定された。
成果の活用面・留意点
- 果実生産に効率のよい誘引、仕立て、光合成産物の分配構造改善のための知見として利 用できる。
- カキ成木における炭素収支の試算に利用可能である。
具体的データ



その他
- 研究課題名:樹体の物質代謝特性の解明と制御技術の開発
- 予算区分 :経常
- 研究期間 :平成 10 年度(平成6年~ 10 年)
- 研究担当者:森永邦久、薬師寺博、児下佳子
- 発表論文等:Respiratory carbon consumption in non-photosynthetic organs of Japanese persimmon,‘Fuyu’. 園芸学会雑誌,67,(別1), 57, 1998.