タイ国でのカンキツトリステザウイルス( CTV )弱毒系統の収集
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要約
タイ国ではカンキツトリステザウイルス( CTV )の検定植物であるライムが経済栽培され、自然の高温により弱毒化されていると 推測されたので、各地のカンキツ園のライムの新葉の病徴が vein clearing 及び軽微な vein soaking 症状を示す樹から穂木を採取して持ち帰り、 生物及び ELISA 両検定によって CTV 弱毒株を得た。
- 担当:果樹試験場・保護部・病原機能研究室
- 連絡先:成果情報のお問い合わせ
- 部会名:果樹
- 専門:作物病害
- 対象:果樹類
- 分類:研究
背景・ねらい
わが国のカンキツの大部分は CTV 強毒系統を保毒しており、耐病性品種であるウンシュウミカン以外の大部分のハッサク、伊予 カン、ネ-ブルオレンジ、ユズ、セミノ-ル等の中晩柑は感受性で 樹勢衰弱、生産性の低下等を生じている。そのため、同種ウイルスの弱毒系統が強毒系統に示 す干渉効果の利用が行われている。現在までに数系統の弱毒ウイル スが選抜されたが完全な防除効果を示していない。そこで、検定植物であるライムが経済栽培 され、自然の高温による熱処理によって弱毒化されていると推測さ れるタイ国で、ライム葉での弱毒系統の病徴である vein clearing あるいは軽微な vein soakng 症状を呈する樹から穂木を採取して、より干渉効果の優れた弱毒系統を得る。
成果の内容・特徴
- タイ国の 10 県下,20 園のライム 64 樹から穂木を採取するとともに、タイ国農業局 保存6株の分譲を受けた。
- CTV 弱毒保毒樹と推定される樹は、ライム葉に vein clearing 及び軽微な vein soaking 症状を呈し健全樹と同様に樹勢が旺盛である園が、特にマレ-半島北部の Rachaburi, Phechaburi, Prachuap khirikhan 県の園地で多かった。
- 持ち帰った穂木の樹皮を ELISA 検定し、70 樹全てが陽性で、CTV の保毒が確認 された。
- 70 樹の穂木を1樹当たりユズ実生苗木1本に接ぎ木接種したところ、49 樹が活 着した。その後枯死したもの及びウイルス感染しなかったものを除いた 43 樹で CTV の保毒 が ELISA で確認された。
- 検定植物のユズとメキシカンライムの葉の病徴、樹の生育( 図 )及び枝のステムピッティング発生調査を行い、弱毒株 25 株、強毒株5株( 表 )を得た。
成果の活用面・留意点
今回得られた弱毒株から、ミカンクロアブラムシで CTV を単離してウイルス学的検討を行う と共に、干渉効果が高く被害回避に利用可能な優良弱毒系統を選抜する。
具体的データ
その他
- 研究課題名:タイ国でのカンキツトリステザウイルス弱毒、強毒系統の探索・収集
- 予算区分 :遺伝資源・経常
- 研究期間 :平成 10 年度(平成9年~10 年)
- 研究担当者:家城洋之、加納 健
- 発表論文等:タイ国でのカンキツトリステザウイルス弱毒,強毒系統の探索・収集
平成 10 年度微生物遺伝資源探索収集調査報告書,12, 13-21, 1999.