日本産カンキツトリステザウイルス分離株の遺伝子解析
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要約
病原性や血清学的性質の異なる日本産カンキツトリステザウイルス(CRV)分離株 の塩基配列を比較し、それらを3群に大別した。 I群には強毒株、II 群には弱毒株、III 群には強毒株と弱毒株が含まれた。強毒株 では GAP 領域に1ないし2塩基の欠失が見られた。なお、日本産 CTV の外被タンパク質遺 伝子にコードされたアミノ酸の保存性は、外国産 CTV と異なり変異に富んでいた。
- 担当:果樹試験場・保護部・病原機能研究室
- 連絡先:成果情報のお問い合わせ
- 部会名:果樹
- 専門:バイテク
- 対象:果樹類
- 分類:研究
背景・ねらい
カンキツトリステザウイルス(citrus tristeza virus:CTV)はネーブルオレンジ、ブンタン類等の中晩柑類の生産を著しく阻害するウイルスで ある。アブラムシ伝染する本ウイルスの唯一の防除法は 弱毒株の強毒株に対する干渉効果を利用することであるが、そのためには両系統の簡便な識別 法の開発が必要である。そこで日本産 CTV 分離株の遺伝子解析を行った。
成果の内容・特徴
- CTV13 分離株の PCR 産物(27K タンパク質遺伝子の3´末端領域から外被タンパク質遺 伝子の大部分の領域を含む約 640 塩基で両遺伝子間にあるタンパク質をコードしない部分(GAP領域)も含む)から得た塩基配 列を比較し、それらを3群に大別した。 I群には強毒株5株、II群には弱毒株4株、III群には強毒株2株と弱毒株2株が含まれた( 図1 )。
- 強毒株の GAP 領域には、特異的に1ないし2塩基の欠失が認められた。
- 外国産 CTV の外被タンパク質では、124 番目のアミノ酸残基が系統特異的である と報告されているが、日本産弱毒株のうち M15A と M23A は強毒株と同じアミノ酸残基を有していた。これは、日本産 CTV が外国産 CTV に比べ、遺伝子レベルの変異に富むことを示唆している。
成果の活用面・留意点
遺伝子診断法が確立されると、弱毒ウイルス保毒苗木の確認が可能になり苗木の普及に貢献で きる。また、干渉効果の機構解明及び早期判定法の開発ができる。
具体的データ

その他
- 研究課題名:カンキツトリステザウイルスの系統分化の解明
- 予算区分 :経常
- 研究期間 :平成 10 年度(平成8年~ 10 年)
- 研究担当者:加納 健、日山東子*、夏秋知英*、今西典子*、奥田誠一*、家城洋之(*宇都 宮大学農学部)
- 発表論文等:Kano, T., Hiyama, T.*, Natsuaki, T.*, Imanishi, N.*, Okuda, S.* and Ieki,H. (1998) Comparative Sequence Analysis of Biologically Distinct Isolates of Citrus Tristeza Virus in Japan, Ann. Phytopath. Soc. Japan 64:270-275.