ブドウルゴースウッド症状から分離されたブドウBウイルスとその遺伝子診断法
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要約
ブドウ枝幹の木質部に生ずる小さな点状又は刻線状のくぼみ、いわゆるルゴースウッド症状を示す「赤嶺」から分離されたひも状ウイルス は、宿主範囲、血清反応、ウイルス外被タンパク質などの諸性状からブドウBウイルス(GVB)と同定され、遺伝子診断法(RT-PCR)による本ウイルス 検出技術を確立した。
- 担当:果樹試験場・カキ・ブドウ支場・病害研究室
- 連絡先:成果情報のお問い合わせ
- 部会名:果樹
- 専門:作物病害
- 対象:果樹類
- 分類:研究
背景・ねらい
近年、山梨県をはじめ各地のブドウ産地で「巨峰」「赤嶺」「甲斐路」等の枝幹部に欧米で rugose wood complex と総称されているウイルス性病害に酷似した症状が発生して問題となっている。そこで、本症状の病原を明らかにするとともに、簡便で再現性の高い、高感度な ウイルス検出法の確立を図る。
成果の内容・特徴
- ルゴースウッド症状( 図1 ) を示す「赤嶺」の緑枝を rugose wood complex (Rupestris stem pitting、Corky bark、Kober stem grooving、LN33 stem grooving)の判別植物 (St. George、LN33、Kober 5BB)に接ぎ木接種した結果、LN33 に Corky bark の反応を示した。
- 本症状発現樹「赤嶺」から Nicotiana occidentalis に汁液伝染するひも状ウイルス(長さ 800nm、幅 11 ~ 12nm)が分離された。
- 分離されたウイルスの宿主範囲は極めて狭く、3科 15 種の供試草本植物のうち、病徴を発現したのは N.occidentalis のみで、N.rotundifolia には無病徴感染した。
- 免疫電顕法で血清関係を調べた結果、本ウイルスはブドウBウイルス(GVB)抗血清と反応したが、ブドウAウイルス(GVA)、ブドウDウイルス(GVD)及びブドウ葉巻随伴ウイルス2(GLRaV-2)の抗血清とは反応しなかった。
- Boscia et al.(1993)の純化方法を改良して得た標品を SDS 処理して調製したウイルス外被タンパク質は、分子量が 23kDa であり、既報の GVB の値と一致した。
- GVB 特異的プライマーを用いた RT-PCR により本ウイルスが特異的に検出され、病葉葉柄の 1,000 倍希釈まで検出可能であった( 図2 )。
- 以上の結果から、本ウイルスは GVB と同定された。
成果の活用面・留意点
わが国のブドウに発生するルゴースウッド症状に GVB が関与していることが明らかとなった。また、本ウイルスを対象とした RT-PCR による遺伝子診断法は無毒母樹の育成、無毒苗の供給にあたっての保毒検定に利用できる。
具体的データ


その他
- 研究課題名:ブドウウイルス病様症状の同定及び診断法の確立
- 予算区分 :経常
- 研究期間 :平成 10 年度(昭和 63 年~平成 12 年)
- 研究担当者:今田準、中畝良二、島根孝典
- 発表論文等:Rugose wood 症状を示すブドウ品種‘赤嶺’から分離された grapevine virus Bについて,日植病報,64(4), 423, 1998(講要).
RT-PCR によるブドウウイルスの検出,日植病報,64(4), 427, 1998(講要).