PCR-RFLP法によるアザミウマ類の種判別法

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要約

PCR-RFLP法を用いて果樹アザミウマ類の種判別方法を確立した。これにより形態によらない、幼虫を含む全ステージでのアザミウマの種判別が可能である。

  • 担当:果樹試験場・カキ・ブドウ支場・虫害研究室
  • 連絡先:成果情報のお問い合わせ
  • 部会名:果樹
  • 専門:作物虫害
  • 対象:果樹類
  • 分類:研究

背景・ねらい

アザミウマ類は一部を除き、体長2~3mm 程度で、形態的には容易に区別できないものが多い。特に雄成虫での区別が困難な場合が多く、さらに幼虫期においてはかなり同定に熟練した者でない限り、区別するのは困難である。アザミウマ類の幼虫期における種の判別の意義は、アザミウマの寄主範囲を調査する際、成虫の場合寄主植物の如何に関わらず、調査した植物体に偶然留まっていたという可能性があるのに対し、幼虫はその植物体上で成育していた可能性が高く、成虫に比べ偶然性が低いと考えられる点にある。特に、日本国内での生態が明らかとなっていない侵入害虫の調査をする上において有効である。
そこで、同所的に棲息する可能性があり、種の判別が困難である5属9種のアザミウマを用い、DNA分析による判別方法の検討を行った。

成果の内容・特徴

  • ミカンキイロアザミウマ、ヒラズハナアザミウマ、ハナアザミウマ、ビワハナアザミウマ、チャノキイロアザミウマ、ネギアザミウマ、ミナミキイロアザミウマ、ダイズウスイロアザミウマ、Oxythrips sp.の5属9種について、リボゾームDNAのITS2領域をPCRにより増幅した結果、得られた増幅産物のサイズに違いが確認された(図1)。
  • 16種類の制限酵素によりITS2増幅産物を消化し、RFLP分析を行った結果、RsaIによる消化で、種特異的なバンドパターンが得られ、また発育ステージによる変異もなかった。したがって、ITS2領域を用いて種の識別ができる(図2)。
  • PCR-RFLP法を用いた種判別は、凍結標本だけでなくアルコール標本を用いた場合も可能である。

成果の活用面・留意点

近年寄主範囲を広げ、果樹での被害が問題となっているミカンキイロアザミウマの他種との識別が容易となり、寄主範囲の特定に活用が期待される。また、栽培作物での寄生を早期に発見し、迅速に防除対策を講じる上でも有効である。

具体的データ

図1 各種アザミウマのITS2増幅産物

図2 Rsalにより消化した各種アザミウマのITS2増幅産物

その他

  • 研究課題名:チャノキイロアザミウマの遺伝的変異性の解析
  • 予算区分 :経常
  • 研究期間 :平成10年度(平成8年~10年)
  • 研究担当者:土田聡、駒崎進吉
  • 発表論文等:PCR法を用いたチャノキイロアザミウマの地域個体群間,寄主植物間における遺伝的差異の検出と類似種との識別,応動昆要旨,201,1997.