風味の優れる中生の青ナシ新品種「秋麗(しゅうれい)」

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要約

ニホンナシ新品種「秋麗」は、「幸水」に「筑水」を交雑して育成した中生の青ナシ品種である。好ましい風味を有し、肉質ち密で高糖度であり良食味である。栽培容易で収穫前落果も少ない。

  • 担当:果樹試験場・育種部・ナシ・クリ育種研究室
  • 連絡先:成果情報のお問い合わせ
  • 部会名:果樹
  • 専門:育種
  • 対象:果樹類
  • 分類:普及

背景・ねらい

「二十世紀」が全国的に広く普及して以来、我が国における青ナシの品種構成はほぼ「二十世紀」単一といってよい状況が続いてきた。そのため「二十世紀」の前に収穫できる食味の優れた青ナシ品種の「秀玉」を育成したが、これより栽培性が優れる青ナシ品種を育成しようとした。

成果の内容・特徴

  • 1982 年(昭和 57 年)に「幸水」に「筑水」を交雑して育成した品種である。個体番号は「281-9」で 1984 年(昭和 59 年)に定植し、1991 年(平成3年)に一次選抜した。1992 年(平成4年)から「ナシ筑波 46 号」の系統名でナシ第6回系統適応性検定試験に供試して検討した。その結果、平成 11 年度同試験成績検討会議において新品種候補に決定し、2000年(平成 12 年)10 月 25 日付けで「秋麗」と命名され、「なし農林 21 号」として登録・公表された。
  • 樹勢は中で枝梢の発生は多い。腋花芽の着生は多く、短果枝の維持も容易である。開花期は4月 20 日頃で「幸水」とほぼ同時期である。育成地での成熟期は9月上旬頃で「秀玉」とほぼ同時期に収穫される( 表1)。収穫前落果の発生は「秀玉」に比べて少ない。黒斑病には抵抗性で、黒星病やその他の病害虫に対しては慣行防除で対応できる。
  • 果形は扁円形で完熟果の果皮色は黄緑色である。有袋果の外観は「二十世紀」と同様に美麗であるが、無袋栽培では中程度のさびを果面全 体に生じる。果実重は 350g 程度で「秀玉」より小さい。果肉硬度は 4.3lbs.程度で「秀玉」よりやや軟らかく、肉質はち密で果汁も多い。果汁糖度は 13% 程度で「秀玉」よりやや高く、果汁の pH は 5.1前後で「秀玉」と同様に食味上はほとんど酸味が感じられない。好ましい風味を有し食味は優れている。心腐れの発生はほとんどみられないが、みつ症が 発生することがある。果実の日持ち性は 25°C で 10 日前後で「秀玉」と同程度である( 表1、 図1)。

成果の活用面・留意点

  • 全国のナシ栽培地帯で栽培が可能である。
  • 無袋では果面全体にさびが少なからず発生するが、食味が優れる青ナシであり、対面販売向けの品種として普及が見込まれる。

具体的データ

表1 「秋麗」の特性

図1 「秋麗」の結実状況

その他

  • 研究課題名:ニホンナシ第6次育種試験、ナシ第6回系統適応性検定試験
  • 予算区分 :経常
  • 研究期間 :平成 11 年度(昭和 57 年~平成 11 年)
  • 研究担当者:町田 裕、梶浦一郎、壽 和夫、佐藤義彦、増田亮一、阿部和幸、栗原昭夫、緒方達志、齋藤寿広、寺井理治、西端豊英、正田守幸、樫村芳記、小園照雄、福田博之、木原武士、鈴木勝征
  • 発表論文等:なし