濃赤色に着色し、酸味のある中生のリンゴ新品種「さんたろう」

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要約

リンゴ新品種「さんたろう」は、「はつあき」に「スターキング・デリシャス」を交雑して育成した中生品種である。果皮は濃赤色で着色が優れ、外観良好である。生食用品種の中では酸味が強い。果実は大きく、豊産性である。

  • 担当:果樹試験場・リンゴ支場・育種研究室
  • 連絡先:成果情報のお問い合わせ
  • 部会名:果樹
  • 専門:育種
  • 対象:果樹類
  • 分類:普及

背景・ねらい

リンゴでは中生の基幹品種を欠いており、早急にそれを育成する必要がある。そのため、第4次リンゴ新品種育成試験においては、生食・加工兼用種とし て優れている「はつあき」と主要経済品種との相互交雑を行い、果実品質が優れ、生産力の高い中生の優良品種を育成しようとした。

成果の内容・特徴

  • 1976 年(昭和 51 年)に「はつあき」に「スターキング・デリシャス」を交雑して育成した。「(4)-286」の個体番号で調査を行い、1986 年(昭和 61 年)に中生の優良系統として一次選抜した。1989 年(平成元年)から「リンゴ盛岡 50 号」の系統名で、リンゴ第4回系統適応性検定試験に供試した。平成 11 年度系適試験成績検討会において新品種候補にふさわしいとの結論が得られ、2000年(平成 12 年)10 月 25 日付けで「さんたろう」と命名され、「りんご農林 17 号」として登録・公表された。
  • 樹勢は強く、樹姿は開張性を呈する。短果枝の 着生は中、腋花芽の着生は多い。「世界一」、「きたろう」、「陽光」等とは交雑不和合であるが、その他の主要経済品種とは和合性である。3倍体であるため 花粉の稔性は低く、授粉樹としては利用できない。豊産性であるが、収穫前落果が多少認められる。主要病害の中で、斑点落葉病には抵抗性、黒星病に対しては 罹病性である。
  • 盛岡における成熟期は 10 月上旬で、「紅玉」より2週間(データ略)、「千秋」より1週間程度早い。大きさは通常 350g 前後と大きい。果形は円、果皮は濃赤色で美しい。果面さびの発生は少ない( 図1 )。糖度は 12.5% とやや低く、酸度(リンゴ酸含量)は 0.7g/100ml 前後を示し、酸味が強い。貯蔵可能期間は室温で2週間、冷蔵で 80 日前後で、「紅玉」(データ略)や「ジョナゴールド」より優れる( 表1 )。
  • 系統適応性検定試験の結果によると、成熟期は長野で9月上旬、東北北部で9月下旬、北海道で 10 月中旬であった。果実の大きさは 302~411g で着色が優れ、多くの場所で外観良好と評価された。糖度は 11~14%、酸度は 0.55~0.77g/100ml 前後で酸味の強いことが指摘された。生産力は「中~高」と評価された( 表2 )。

成果の活用面・留意点

  • 生食用としては酸味が強いが、酸味を好む消費者に受入れられると考えられる。「紅玉」より大玉で豊産性であり、ジュースや菓子等の加工用素材としても期待される。
  • 着色の優れる品種であるが、暖地では劣ることから、栽培適地は東北地方以北である。
  • 収穫前落果が多少認められるため、収穫遅れにならないように注意する必要がある。

具体的データ

図1 「さんたろう」の果実

表1 育成地(岩手県盛岡市)における「さんたろう」の特性

表2 系統適応性検定試験における「さんたろう」の特性調査結果

その他

  • 研究課題名:第4次新品種育成試験、リンゴ第4回系統適応性検定試験
  • 予算区分 :経常
  • 研究期間 :平成 11 年度(昭和 51 年~平成 11 年)
  • 研究担当者:吉田義雄、副島淳一、羽生田忠敬、別所英男、増田哲男、小森貞男、土屋七郎、伊藤祐司、阿部和幸、真田哲朗、古藤田信博、加藤秀憲、樫村芳記
  • 発表論文等:なし