カラタチにおけるとげなし性の遺伝様式

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要約

カラタチのとげなし性の遺伝には一対の遺伝子が関与し、劣性ホモの個体はとげな しとなる。

  • 担当:果樹試験場・カンキツ部・遺伝資源研究室
  • 連絡先:成果情報のお問い合わせ
  • 部会名:果樹
  • 専門:育種
  • 対象:果樹類
  • 分類:研究

背景・ねらい

カンキツ類の実生苗には一般にとげがあり、台木養成や芽接ぎ繁殖を行う上で支障となる 。特にカラタチは大きくて鋭いとげを持つが、偶発実生として生 じたとげなしタイプの変異系統も報告されている。とげなし性は栽培管理上取り扱いが容易で 、有刺品種に比べて省力的であり有用な特性である。この特性の利 用を図るために、とげなしカラタチの後代におけるとげなし性の分離状況及び遺伝様式につい て検討した。

成果の内容・特徴

  • とげなしカラタチを含むカラタチ系統間の交雑や自殖によって得られた実生個体群につ いて、とげの有無を発芽後約 10 か月の時点で調査した。そのうちの一部の個体群については 有刺節率についての調査も行った。
  • 実生個体群におけるとげの有無の分離状況( 表1 )から、とげなし性には一対の遺伝子が関与し、とげなし個体は劣性ホモと推定された。とげ なし系統を種子親あるいは花粉親に用いた場合に分離の違いはみられず、細胞質の関与はない と考えられた。
  • 有刺個体と判定したものの中には、とげのある節の少ない部分的なとげなし性と みなすべき個体がかなりの頻度で認められたため、有刺性はとげなし性に対して不完全優性を 示すものと推察された。

成果の活用面・留意点

実験で用いたカラタチは単胚性であるが、とげなしカラタチを台木として利用するには 、多胚性で樹勢の強い系統を育成する必要がある。

具体的データ

表1 カラタチ系統の自殖、交雑及び戻し交雑個体群におけるとげの有無の分離状況

その他

  • 研究課題名:ダイアレル交雑によるカンキツ諸形質の遺伝様式の解明
  • 予算区分 :経常
  • 研究期間 :平成 11 年度(平成2年~ 15 年)
  • 研究担当者:吉田俊雄、根角博久
  • 発表論文等:Inheritance of thornlessness in trifoliate orange [Poncirus trifoliata (L.) Raf.]., J. Japan. Soc. Hort. Sci., Vol. 68(6), 1104-1110, 1999.