TDR 土壌水分計による果樹園の土壌水分分布の簡易迅速測定法

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要約

数時間で 100 地点以上の土壌水分測定が可能な TDR 土壌水分計は、測定土壌水分の検量線を個々のプローブごとに作成することにより測定精度が向上し、果樹園における土壌水分環境の迅速測定を可能にする。

  • 担当:果樹試験場・栽培部・根圏機能研究室
  • 連絡先:成果情報のお問い合わせ
  • 部会名:果樹
  • 専門:土壌肥料
  • 対象:果樹類
  • 分類:研究

背景・ねらい

果樹園地では、植栽方法や地形、樹体管理、地表面管理、管理機の走行によって、土壌物理性や地表面での蒸発散が異なることから、土壌水分が不均一に分布す ると考えられる。そこで、水分変動の激しい園地条件下でも短時間に測定が可能な TDR 土壌水分計を用いて、果樹園地の簡易迅速土壌水分測定法について検討する。

成果の内容・特徴

  • TDR 土壌水分計(Campbell社製CS615)はプローブと計測部からなり可搬性が高い。プローブは長さ 30cm 直径 3.2mm のステンレス製センサーロッド2本からなり、土壌に挿入することにより、内蔵の検量線を用いて周辺土壌の含水率が測定される。太陽電池の使用により、定位 置で長期間無人測定が可能で、測定データは計測部メモリーに保存される。
  • プローブを土壌に鉛直挿入することにより、深さ 30cm までの土壌水分(含水率)が直ちに測定される。プローブの挿入を繰り返すことにより、短時間に多地点の測定ができるので、果樹園地の土壌水分の不均一性や経時変化の測定が可能になる。
  • 測定値は、含水率に対応する周波数の変化をパルス長(ms)に変換した値で得られるが、プローブによってこの値が異なり、含水率で1%以上の差を生じることもあるので( 表1 )、プローブごとに検量線を作成する必要がある。検量線は調査土壌を用いて作成するのが望ましく、有機物を連用した淡色黒ボク土壌では、実測値(乾土法)と TDR 測定値の差は、含水率で 0.5% 未満であった( 表2 )。なお、プローブを曲げたり、土壌との間に空隙ができると誤差の原因となるので、プローブと土壌をよく密着させる。また、プローブの挿入が難しい土壌や、接触誤差が大きい礫質土壌での使用は困難である。
  • 淡色黒ボク土ブドウ園の測定事例( 10 月 23 日)を示すと、主幹の周辺土壌6×8m の範囲内を 50cm 間隔、2本のプローブで測定したところ、221 地点を約2時間で測定できた。降雨 18 日後の含水率は、37~46% の範囲にあり、幹を中心としたいくつかの方向に乾燥した場所が見られ、含水率の差は最大9%にもなることが明らかとなった( 図1 )。

成果の活用面・留意点

  • 肥料や有機物等の局所施用によって、著しく土壌 EC 値の水平分布に変動がある園地では、TDR 測定値が影響を受けるため、EC を測定し補正する必要がある。
  • プローブを土壌に埋設したり挿入することにより、特定の深さや土層の土壌水分変化の連続測定も可能で、測定間隔は任意に設定できる。

具体的データ

表1 同一園地におけるTDR測定値と含水率のプローブ間差

表2 有機物施用園地における含水率の実測値とTDR換算値

図1 淡色黒ボク土ブドウ園における土壌水分分布(含水率(%):深さ0~30cm)

その他

  • 研究課題名:果樹の簡易根域環境調査法の開発
  • 予算区分 :経常
  • 研究期間 :平成 11 年度(平成9年~15 年)
  • 研究担当者:平岡潔志(現和歌山県暖地園芸センター)、梅宮善章、中村ゆり
  • 発表論文等:TDR による黒ボク土果樹園の土壌水分測定, 日本土壌肥料学会講演要旨,46, 153, 2000.