我が国におけるカンキツかいよう病菌の系統分化

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要約

カンキツかいよう病菌には、オオタチバナ、バンペイユ及びアンセイカンに対して病原力が異なる2つの系統が存在する。これらの系統は ERIC 配列をプライマーとした rep-PCR により識別することができる。

  • 担当:果樹試験場・カンキツ部・病害研究室
  • 連絡先:成果情報のお問い合わせ
  • 部会名:果樹
  • 専門:作物病害
  • 対象:果樹類
  • 分類:研究

背景・ねらい

カンキツかいよう病はカンキツ栽培における最重要病害の一つである。本病の病原細菌であるカンキツかいよう病菌(Xanthomonas campestris pv. citri)は広い宿主範囲を有しカンキツ属を含む多くのミカン科植物に感染する。本病原細菌にはこれまで病原性、又は病原力が異なる系統の存在は確認されていなかったが、本細菌の生態並びに病原性発現機構を詳細に解明するためには系統を明らかにする必要があった。

成果の内容・特徴

  • カンキツかいよう病菌8分離株をオオタチバナ(ブンタン類縁種)及びバンペイユとアンセイカン(ブンタン類)の葉に付傷接種した結果、大型病斑を形成する4株と小型病斑を形成する4株に2分された( 図1 )さらに、41 分離株を供試してネーブルオレンジとオオタチバナの葉に付傷接種した結果、前者では各株の形成病斑の大きさは正規分布し、株間に違いが認められなかったが、後者では病斑の大小によって2系統に分かれた( 図2 )。
  • 本細菌各系統の全 DNA に対し Louws らにより報告された ERIC 配列をプライマーとした rep-PCR を行った結果、強病原力系統でのみ 1.8kb の DNA 断片が特異的に増幅された( 図3 )。1.8kb DNA 断片の増幅の有無と病原力とは例外なく相関し、本 PCR 法は本細菌の系統を識別する有効な方法であると考えられた。

成果の活用面・留意点

  • 系統分化機構の解析を通じて本細菌の病原性発現機構並びに宿主の本病抵抗性発現機構の解明が期待される。
  • 本細菌のほ場における生態を詳細に解析することが可能となる。
  • 本細菌弱病原力系統はオオタチバナ、バンペイユ及びアンセイカンに対し過敏感反応を誘導しない。したがって、本系統がこれらの品種に対する非病原性遺伝子を有している可能性は極めて低いと考えられる。

具体的データ

図1 カンキツかいよう病菌強病原力系統(A)及び弱病原力系統(B)がオオタチバナ葉上に形成した病斑

図2 カンキツかいよう病菌分離株のオオタチバナ及びネーブルオレンジの葉における病斑の大きさの分布

図3 カンキツかいよう病菌各系統分離株の全DNAを鋳型としたrep-PCR

その他

  • 研究課題名:遺伝子診断法によるカンキツかいよう病細菌の系統識別及び検出技術の開発
  • 予算区分 :バイテク(病原遺伝子)
  • 研究期間 :平成 11 年度(平成7年~ 12 年)
  • 研究担当者:塩谷 浩、伊藤 伝
  • 発表論文等:Differentiation in Pathogenicity of Xanthomonas campestris pv.citri (Hasse) Dye Found on Citrus otachibana Hort ex. Tanaka. Abstracts., 7th International Congress of Plant pathology P1.6.1, 1998.