ブドウルゴースウッド症状から分離されたブドウ A ウイルス (GVA) とその診断法
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要約
ブドウルゴースウッド症状から分離されたひも状ウイルスを、宿主範囲、血清反応等の諸性状からブドウ A ウイルス(GVA)と同定し、血清学的診断法(ELISA)及び遺伝子診断法(RT-PCR)を確立した。
- 担当:果樹試験場・カキ・ブドウ支場・病害研究室
- 連絡先:成果情報のお問い合わせ
- 部会名:果樹
- 専門:病害
- 対象:果樹類
- 分類:研究
背景・ねらい
近年、各地のブドウ産地でブドウ枝幹部に欧米で rugose wood complex と総称されているウイルス性病害に酷似した症状が発生して問題となっている。そこで、本症状の病原を究明するとともに、簡便で再現性の高い、高感度なウイルス検出法の確立を図る。
成果の内容・特徴
- ブドウ台木品種「Teleki5BB」に rugose wood complex のうちの Kober stem grooving によると思われる木質部に grooving 症状( 図1 )を示す樹から Nicotiana benthamiana に汁液伝染するひも状ウイルス(長さ 800nm、幅 11~12nm)( 図2 )が分離された。
- 分離されたウイルスの宿主範囲は極めて狭く、試験した5科 15 種の草本植物のうち、病徴を現したのは N.benthamiana のみで、N.occidentalis に無病徴感染した。
- 免疫電顕法で血清関係を調べた結果、本ウイルスは GVA 抗血清と反応したが、ブドウB ウイルス(GVB)、ブドウ D ウイルス(GVD)及びブドウ葉巻随伴ウイルス2(GLRaV -2)の抗血清とは反応しなかった。
- 既報の GVA 塩基配列に基づいてプライマー設計し、 RT-PCR によりコートタンパク質遺伝子をクローニングした。シーケンス解析の結果、塩基配列及びこれから推定されるアミノ酸配列は既報の GVA のものとそれぞれ 89%、97% の相同性を示した。
- Minafra and Hadidi(1994)の GVA 特異的プライマーを用いた RT-PCR により本ウイルスが特異的に検出された( 図3 )。ブドウ病葉葉柄磨砕液の 1,000 倍希釈まで検出可能であった。
- Monnet and James(1990)の純化法を一部改変して純化したウイルス標品を家兎に免疫して作製した抗血清は重層法で 1,280 倍の力価を示し、これから調製した IgG 及び conjugate による DAS-ELISA では、市販の GVA エライザキットに比較してより高感度にウイルスを検出することができた。
- 以上の結果から、本ウイルスは GVA と同定された。また、ルゴースウッド症状を示す一般栽培品種の多くから ELISA あるいは RT-PCR により本ウイルスが検出されたことから、本邦に発生するルゴースウッド症状には既報の GVB に加えて GVA も関与している可能性が示唆された。
成果の活用面・留意点
本ウイルスを対象とした ELISA による血清学的診断法及び RT-PCR による遺伝子診断法は無毒母樹の育成、無毒苗の供給に当たってのウイルス保毒検定に利用できる。
具体的データ
その他
- 研究課題名:ブドウウイルス病様症状の病原の同定及び診断法の確立
- 予算区分 :経常
- 研究期間 :平成 11 年度(昭和 63 年~平成 12 年度)
- 研究担当者:今田 準、中畝良二
- 発表論文等:ブドウ Rugose wood 症状から分離された grapevine virus A,日植病報,65(6), 677,1999(講要).