果実が大きく着色抑制栽培に適するモモ新品種候補「モモ筑波 113 号*

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要約

モモ新品種候補「モモ筑波 113 号」は、「う-9」に「C2R19T182」を交雑して育成 した中生系統である。生理落果が少なく、果実は大玉で着色が少なく、食味も比較的良好なことから着色抑制栽培に適する。

  • 担当:果樹試験場・育種部・核果類育種研究室
  • 連絡先: 成果情報のお問い合わせ
  • 部会名: 果樹
  • 専門: 育種
  • 対象: 果樹類
  • 分類: 普及

背景・ねらい

現在のモモは果皮に着色させる栽培が主流であるが、一部には果皮に着色をほとんどさせない栽培が行われている。こうした栽培には、「清水白桃」や「白桃」 等果皮着色が少ない品種が用いられるが、現在の品種は生理落果が多く栽培が不安定なことから、栽培性の優れた大玉品種の育成を目標に試験を実施した。

成果の内容・特徴

  • 1979 年(昭和 54 年)に、選抜系統の「う-9」(「白桃」×「布目早生」)に米国からの導入系統である「C2R19T182」を交雑して得られた実生から育成した。 1981 年 (昭和 56 年)に個体番号「153-15」を付して定植し、同年に初結実し1986 年(昭和 61 年)に注目個体として選抜した。1992 年(平成4年)より系統番号「モモ筑波 113 号」としてモモ(生食用)第7回系統適応性検定試験に供試した。平成 12 年度落葉果樹系統適応性・特性検定試験成績検討会において新品種候補にふさわしいとの合意が得られた。
  • 樹勢はやや強く、樹姿は開張性と直立性の中間となる。新梢の発生は中、花芽の着生はやや多い。花は単弁桃色で花粉を有し自家結実性である。開花期は「あかつき」と同時期かやや遅い。収穫期は「あかつき」より2~3週間程度遅い中生系統である。生理落果の発生は少ない。
  • 果形は円形で果実重は 300~400g となり「あかつき」よりかなり大きい。果皮の地色は白色、着色は少なく、有袋栽培により着色のほとんどないきれいな果実を収穫できる。玉揃いは比較的良好 である。果面の裂果、肌荒れは見られない。果肉は白色、溶質で粗密は中程度、繊維は少ない。果肉及び核周囲の紅色素は少ない。核は粘核である。果汁の糖度 はやや高いが、「あかつき」に較べると1%前後低く、酸味は少ない。渋味 の発生は認められず、食味は比較的良好である。有袋により容易に外観の優れた無着色タイプの果実生産ができることが本品種の大きな特徴である(表1、図1)。

成果の活用面・留意点

  • 岡山県など関西市場向けの着色抑制栽培に適している。果面の着色が求められる産地には適さない。生理落果が少なく、渋味の発生も少ないので、夏季に降雨が少なく、果実糖度の上昇が良好な産地で特性を発揮する。
  • 収穫期に降雨の多い条件では食味の低下を招くので注意が必要である。せん孔細菌病の発生が認められるので対策が必要である。また、灰星病にも罹病性なので防除が必要である。

具体的データ

表1 モモ筑波113号の樹及び果実特性の概要

 

図1 モモ筑波113号の結実状況

その他

  • 研究課題名:モモ(生食用)第5次育種試験、第7回モモ系統適応性検定試験
  • 予算区分:経常
  • 研究期間:平成 12 年度(昭和 54 年~平成 12 年)
  • 研究担当者:山口正己、吉田雅夫、京谷英壽、土師 岳、八重垣英明、中村ゆり、西村幸一、三宅正則、小園照雄、福田博之、木原武士、鈴木勝征
  • 発表論文等:なし

* 2001年(平成 13 年)10 月9日付けで「白秋はくしゅう 」と命名され、「もも農林 24 号」として登録・公表された。