無核性、良食味性及び機能性成分付与に有効なカンキツ中間母本候補「G -169*

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要約

「G-169」は「キングマンダリン」と「無核紀州」の雑種である。果実は風味が良く良食味で、機能性成分に富む。また、健全花粉を持つが、雌性不稔で無核であるので、無核性、良食味性及び機能性成分高含有のカンキツ新品種育成に有効な中間母本である。

  • 担当:果樹試験場・カンキツ部・遺伝資源研究室
  • 連絡先: 成果情報のお問い合わせ
  • 部会名: 果樹
  • 専門: 育種
  • 対象: 果樹類
  • 分類: 普及

背景・ねらい

良食味性、無核性はカンキツの優良品種の必要条件になっている。また、新規需要開拓の面から機能性成分が注目されている。そこで、雌性不稔による強い無核 性を有する「無核紀州」を花粉親とする雑種個体群の育成を行い、品質良好な無核個体の選抜を進めるとともに、機能性成分として交感神経興奮作用を有するシ ネフリン、発がん抑制作用を有するβ-クリプトキサンチン、ポリメトキシフラボノイド(ノビレチン、タンゲレチン)、抗酸化作用を有するフェニールプロパ ノイドに着目し、これら成分の含有量の高い個体の選抜を行った。

成果の内容・特徴

  • 「G -169」は 1986 年(昭和 61 年)に果樹試験場興津支場(現カンキツ部興津)において、「キングマンダリン」に「無核紀州」を交雑して育成した雑種である。
  • 樹は直立性で、樹勢は中庸である。かいよう病、そうか病に強く、栽培は容易である。花粉量はやや少ないが、花粉稔性率は約 80%で十分交雑に使える高さである。
  • 「ナツミカン」と「ヒュウガナツ」の混合花粉を受粉しても健全種子は全く入らなかった。また、自然受粉果でも健全種子は認められず、 強い不稔性を示す(表1)。 本系統の後代には無核個体が高率で出現する(表2)。
  • 果実は扁球形で約 120g と小果である。果皮は橙色で、厚さ 3.5mm 内外、果皮歩合は約 30% である。果面の粗滑は中程度で、浮皮の発生は無く、剥皮性は中程度である。果肉は橙色で多汁である。じょうのう膜の硬さはやや軟である。「キングマンダリ ン」に似た風味を有し、食味は良好である。成熟期は1月下旬~2月上旬である(図1、 表3)。
  • 果皮、果肉中のシネフリンは既存品種の中でも含有量の多い「シィクワシャー」や「タチバナ」に比べて、幼果期には明らかに多く、果皮着 色期にはそれらに匹敵する含有量である。果汁中の機能性成分では、総カロテノイド含量、β-クリプトキサンチン含量は「キングマンダリン」よりやや少ない ものの高含有である。ノビレチン、タンゲレチン含量は含有量の多い「シィクワシャー」や「タチバナ」に比べて明らかに多い。また、フェニールプロパノイド についても比較的高含有である (表4)。

成果の活用面・留意点

果実はやや小果であるが、無核性、良食味性、機能性成分高含有の品種育成のための花粉親として有用であり、中間母本として登録の予定である。

具体的データ

表1 G-169の自然受粉及び人工授粉による無核果率

 

表2 G-169の後代における無核個体の分離

 

図1 G-169の果実

 

表3 G-169の果実特性

 

表4 G-169の機能性成分含有量

 

その他

  • 研究課題名:早生カンキツ第6次育種試験、カンキツの高品質特性の育種素材化、カンキツの雌性不稔育種素材の選抜、機能性成分高含有カンキツ系統の開発と評価、発がん抑制成分高含有中間母本の作出
  • 予算区分:経常、大型別枠[新需要創出]、基礎研究推進事業
  • 研究期間:平成 12 年度(昭和 61 年 ~ 12 年)
  • 研究担当者:吉田俊雄、根角博久、吉岡照高、矢野昌充、伊藤祐司、中野睦子、小川一紀、上野 勇、山田彬雄、村瀬昭治、瀧下文孝、日高哲志、川井 悟*、小松 晃* (*生研機構)
  • 発表論文等:なし

* 2001年(平成 13 年)10 月付けで「柑橘中間母本農6号」として登録された。