冷温高湿貯蔵によるカンキツ「清見」の長期品質保持

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要約

カンキツ「清見」は、乾燥予措を施さずに、温度5~6℃、相対湿度 98% 以上とする冷温高湿貯蔵により果皮障害が抑制され、5ヶ月以上の長期間、商品価値の高い外観及び食味品質を保持することができる。貯蔵中の腐敗、カビの発生は、オゾンと負イオンにより低減できる。

  • 担当:果樹試験場・カンキツ部・栽培生理研究室
  • 連絡先: 成果情報のお問い合わせ
  • 部会名: 果樹
  • 専門: 流通利用
  • 対象: 果樹類
  • 分類: 普及

背景・ねらい

カンキツ「清見」は果実品質が優れるものの、収穫後あるいは貯蔵後に果皮に生理障害が発生し、著しく商品価値をそこねる場合がある。冷温高湿貯蔵は、果実からの水分損失を抑制し青果物の貯蔵期間を著しく延長する技術である。そこで、貯蔵湿度が「清見」の果皮障 害に及ぼす影響を検証し、冷温高湿貯蔵技術を活用した長期貯蔵を試みた。

成果の内容・特徴

  • 「清見」果実を、乾燥予措を施さず、相対湿度 98% 以上の冷温高湿庫に貯蔵した場合、果皮障害の発生及び果皮の萎れは軽微にとどまり、5ヶ月以上の期間、新鮮な外観を保持することができた(図1、2)。
  • 「清見」の果実品質は、貯蔵中に酸度が低下し糖度は保持されるため、糖酸比が向上した(表1)。 食味は、5℃の温度で6ヶ月以上貯蔵した後でも、 ややおいしいと評価された(図3)。
  • 冷温高湿貯蔵では果実の腐敗やカビが発生しやすいため殺菌装置を併用した。庫内にオゾンと負イオンを、各々 50 ~ 120ppb、2~8× 104 個/cm3 の濃度で充満させることにより、貯蔵期間中、カビ類の発生はほとんど見られなかった。

成果の活用・留意点

  • 乾燥予措は果皮障害を助長するので、収穫後速やかに貯蔵を開始する。
  • 貯蔵温度2℃以下では、果皮に低温障害が発生する。また、10℃ 以上の高温では減酸が進み味ぼけするので、貯蔵温度の設定には注意が必要である。

具体的データ

図1 カンキツ「清見」の外観 健全な果実(左)と果皮障害の発生した果実(右)

 

図2 高湿度(相対湿度98%)及び低湿度(同82~88%)に貯蔵した「清見」ぼ外観の変化

 

図3 低温で約200日間貯蔵した「清見」 果実について行った官能試験の調査用紙と回答結果の平均値プロフィール(★)

 

表1 6ヶ月以上貯蔵した「清見」の果実品質

 

その他

  • 研究課題名:低温障害発生機構の解明に基づくカンキツ果皮の貯蔵障害回避技術の開発
  • 予算区分:パイオニア特別研究
  • 研究期間:平成 12 年度(平成 11 年 ~ 13 年)
  • 研究担当者:藤澤弘幸、高原利雄、緒方達志 発表論文等:冷温高湿貯蔵により、予措をせずに貯蔵した‘清見’タンゴールの果皮障害は抑制される,園芸学会雑誌, 69(別1), 213, 2000.