ブドウ育種において交雑実生の遺伝的差異を効率よくとらえるための調査法

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要約

ブドウ交雑育種において、交雑実生の果実形質の遺伝的差異をとらえるためには、一つの実生について複製樹を作るよりも1樹について年次反復をして調査を行う方が効率的である。

  • 担当:果樹試験場カキ・ブドウ支場・育種研究室
  • 連絡先: 成果情報のお問い合わせ
  • 部会名: 果樹
  • 専門: 育種
  • 対象: 果樹類
  • 分類: 研究

背景・ねらい

個体の維持に比較的大きな面積を要し、結実までに時間を要する果樹の育種においては、いかに短期間で個体の遺伝的な差異をとらえ、限られた圃場を効率的に回転させるかが重要な課題となる。
そこで、より少ない調査によって個体の遺伝的な差異を識別し、効率よく選抜・淘汰を進めるために、ブドウ交雑実生圃場における熟期、果粒重、糖度、酸含 量、果肉の歯切れの良さを表す変形量及び果肉の硬さを表す最大破断力の環境変異を推定し、効率よく個体の遺伝的差異をとらえる調査方法を検討した。

成果の内容・特徴

  • すべての果実形質について、1果房内の果粒の変異(σ2b )は、1樹内の果房間の変異(σ2c )より大きい (表1)。
  • 果粒重、糖度、果肉の歯切れの良さ(変形量)及び果肉の硬さ(最大破断力)については、1果房内の果粒の調査反復を多くすることが環境変異を減少させる上で最も有効である (表1)。
  • 年次による分散に対する樹の分散の比、σ2v/(σ2y+σ2gy) は、小さくなるほど年次反復の方が樹の反復よりも環境分散が減少する。熟期、果粒重、糖度、果肉の歯切れの良さ及び果肉の硬さは、それぞれの交雑実生につ いて栄養繁殖により樹を複数育成して調査を行うよりも、1樹だけを育成し年次を反復して調査を行う方が効率的に交雑実生の遺伝的差異をとらえることができ る (表2)。

成果の活用面・留意点

  • ここで得られた結果は、多くの個体を扱うブドウ育種の一次選抜において有効である。
  • 得られた環境分散の推定値を用いて、精度の高い遺伝分析を行うことができる。

具体的データ

表1 ブドウ果実形質において各循環分散成分の推定値が環境分散全体に占める割合

表2 年次による分散に対する樹の分散の比

その他

  • 研究課題名:ブドウ果実形質の遺伝様式の解明
  • 予算区分 :経常
  • 研究期間 :平成 12 年度(平成9年 ~ 18 年)
  • 研究担当者:佐藤明彦、山田昌彦、岩波 宏
  • 発表論文等:Optimal spacial and temporal measurement repetition for reducing environmental variation of berry traits in grape breeding, ScientiaHorticulturae,85,75-83,2000.