カンキツ類の自家不和合性に関与する雌ずいタンパク質

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要約

カンキツ類の自家不和合性品種の開花直前の雌ずいには分子量 28kDa の塩基性タンパク質が特異的に発現する。このタンパク質は自家和合性品種においては認められず、リンゴ、ナシの自家不和合性に関与するSタンパク質と類似する。

  • 担当:果樹試験場・カンキツ部・育種研究室
  • 連絡先: 成果情報のお問い合わせ
  • 部会名: 果樹
  • 専門: 育種
  • 対象: 果樹類
  • 分類: 研究

背景・ねらい

リンゴ、ナシの自家不和合性にはSタンパク質が大きく関わっている。このタンパク質は花粉管伸長を阻害す る RNase 活性をもっており、カンキツ類についても同様なタンパク質が働いていることが考えられる。そこで、カンキ ツ類の自家不和合性と自家和合性両品種における開花期の雌ずいタンパク質の相違を調べ、リンゴ、ナシのSタ ンパク質との関連を検討した。

成果の内容・特徴

  • 自家不和合性品種(6品種)と自家和合性品種(6品種)の開花4日前と1日前の雌ずいタンパク質を抽出し、SDS - PAGE を行った。自家不和合性品種の開花1日前の雌ずいでは分子量 28kDa のタンパク質が強く発現しており、この分子 量はリンゴ、ナシのSタンパク質に非常に近似している (図1)。
  • この雌ずいタンパク質を2次元電気泳動法を行って電荷を調べたところ、自家不和合性品種の開花 1日前に強く発現する 28kDa のタンパク質はリンゴ、ナシのSタンパク質と同様に強い塩基性を示した (図2)。
  • ナシ、リンゴのSタンパク質と相同性の高い領域のペプチドと反応するモノクローナル抗体を作成し、 自家不和合性を示すハッサクの雌ずいタンパク質と抗原抗体反応させたところ、開花1日前の 28kDa タンパク質に対応 するスポットが現れた(図略)。
  • 以上の結果からカンキツの自家不和合性品種の雌ずいには、リンゴ、ナシなどと類似したSタンパク質 の存在する可能性が高い。

成果の活用面・留意点

28kDa タンパク質がカンキツのSタンパク質であることを確定するには、自家不和合性品種の雌ずいからこのタンパク質を分離・精製後、ペプチドシーケンサーによりアミノ酸配列を決定し、ナシ、リンゴなどのSタンパク質とのアミノ酸配列の比較や RNase 活性の検討、in vitro における自家の花粉管伸長阻害試験などを行う必要がある。

具体的データ

図1 自家不和合性品種の雌ずいタンパク質電気泳動図

図2 自家不和合性品種(ヒュガナツ:A)と自家和合性品種(セミノール:B)の開花1日前の雌ずいタンパク質の2次元電気泳動

その他

  • 研究課題名:カンキツの自家不和合性を示すSタンパク質の免疫化学的検討
  • 予算区分 :科学技術庁重点基礎研究
  • 研究期間 :平成 12 年度(平成 12 年)
  • 研究担当者:國賀 武、松本亮司
  • 発表論文等:Comparison of pistil protein expression between
  • self-compatible and -incompatible citrus cultivars,International Society of Citriculture Congress 2000 Abstracts, 160, 2000.