ニホンナシ園及びモモ園における地上部維持呼吸量
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要約
ニホンナシ園とモモ園の地上部維持呼吸量は気温が 10℃ 上昇すると 1.9 ~ 2.2倍に増大する。8月には維持呼吸の
ためニホンナシ園では1日m2 当たり 16g、 モモ園では1日m2 当たり7gの炭水化物が消費さ
れる。維持呼吸の大半は葉で行われ、骨格枝の維持呼吸は比較的少ない。
- 担当:果樹試験場・栽培部・気象生態研究室
- 連絡先: 成果情報のお問い合わせ
- 部会名: 果樹
- 専門: 農業気象
- 対象: 果樹類
- 分類: 研究
背景・ねらい
維持呼吸は、植物体を維持するために必要な乾物重に比例する呼吸である。木本性作物である果樹は、草本性作物に比べ
て骨格枝など非同化器官の乾物重が大きいことから、これを整枝・剪定により必要最小限に抑えて維持呼吸を抑制するこ
とが物質生産上好ましいとされてきた。しかし、維持呼吸は生長呼吸と分離して測定することが困難な上、値が器官ごと
に大きく異なり、温度依存性も高いことから、その実態は十分に解明されていない。そこで、呼吸速度の測定を器官別に
毎月実施し、実際のニホンナシ園及びモモ園でどの程度の維持呼吸が行われているのかを明らかにしようとした。
成果の内容・特徴
- 露地で栽培されているニホンナシ樹「幸水」とモモ樹「あかつき」成木の地上部各器官の呼吸速度を暗黒条件下で毎
月測定し、維持呼吸速度を計算し
た。その結果、乾物重当たりの維持呼吸速度は葉で非常に高く、果実と発育枝は葉の 1/2 ~ 1/10、骨格枝と側枝は葉の
1/30 ~ 1/80
にすぎない
(表1、
表2)。
- ニホンナシ樹とモモ樹の各器官における維持呼吸速度の温度依存性を室内で測定した。その結果、各器官の維
持呼吸速度は気温が 10℃
上昇すると 1.6 ~ 2.3 倍に増大する。このことから、気温が 10℃ 上昇すると樹全体の維持呼吸量は 1.9 ~ 2.2 倍に
なる
(表3)。
- 以上の結果をもとにして、野外で維持呼吸に費やされる炭水化物量を計算すると、最高は8月で、ニホンナシ
園では 16g m-2day-1、モモ園では 7g m-2day-1 と推定される。また、
維持呼吸の大半は葉で行われ、骨格枝の維持呼吸は全体の約2%で、その量は樹全体の物質生産にさほど大きく影響しな
い
(図1)。
成果の活用面・留意点
ナシ・モモの樹体生長や作柄を気象状況から推定しようとする際、基礎的知見として活用できる。
具体的データ




その他
- 研究課題名:ナシ・モモ各器官における乾物の蓄積と消費
- 予算区分 :経常
- 研究期間 :平成 12 年度(平成8年 ~ 12 年)
- 研究担当者:伊藤大雄、杉浦俊彦、黒田治之
- 発表論文等:ニホンナシ樹の地上部各器官における維持呼吸速度の評価,園芸学会雑誌,69(別2),259,2000.