皮接ぎを利用したカンキツ台木の樹勢調節能の早期評価法

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要約

カンキツ台木実生の主幹に別の台木の樹皮を皮接ぎすると、相対的に樹勢の弱い台木の樹皮を接いだ部分が太くなる。この現象を利用し、カンキツ台木の樹勢調節能を実生の段階で早期評価することが可能である。

  • 担当:果樹試験場・カンキツ部・栽培生理研究室
  • 連絡先: 成果情報のお問い合わせ
  • 部会名: 果樹
  • 専門: 生理
  • 対象: 果樹類
  • 分類: 研究

背景・ねらい

果樹園管理作業の省力化・軽労働化のためには、樹を小型に保つことが必要である。しかし、カンキツの品種によっては樹勢が強いために樹が大型化してしまうことがある。また、樹勢の弱い品種については、樹勢を適正に保つことが収量を確保するうえで重要である。これらの問題を解決するためには、穂品種に応じた適正な樹勢調節能を持った台木を利用することが非常に有効である。しかし、カンキツでは現在のところ利用できる優良台木が少ない。優良台木の育成は、多大な労力と長期間を要する。そこで、台木の選抜を効率化するため、台木の樹勢調節能を早期に判断する方法を開発する。

成果の内容・特徴

  • 圃場において‘大谷伊予柑’を各種台木に接ぎ木して 10 年以上栽培した結果、台木によって地上部の大きさが異なり、わい性の台木ほど台勝ち(穂木よりも台木が太くなる現象)が著しい (図1)。
  • 台木品種の1年生実生の樹皮を5~7月に3~5cm 幅で剥ぎ取り、同様に樹皮を剥ぎ取った他の台木品種に皮接ぎしたところ、6ヶ月以内に圃場試験と同様にわい性台木の部分が太くなった (写真1)。すなわち、この方法は相対的な台木の樹勢調節能を早期に判断する方法として利用できる。
  • 各台木とカラタチとの間で皮接ぎしたところ、木部径肥大量の比(木部径肥大率 図2)と‘大谷伊予柑’の台木試験における地上部の容積との間には直線的な相関関係が認められた (図3)。

成果の活用面・留意点

  • 多大な労力、期間及び圃場面積を要するカンキツ台木の選抜が、効率的に進められる。
  • ほとんどのカンキツ台木に適用できるが、キンカン(台木に使うと弱樹勢)には適応できないことを確認しているので、他の方法とも組み合わせて評価するとともに、最終的には圃場試験で樹勢調節能を確認する必要がある。
  • カラタチの品種・系統間など樹勢調節能の差が小さい場合は、肥大の差もわずかとなるので、反復を増やすとともに生育期間をより長くする必要がある。

具体的データ

図1 台木の違いによる接木部の台勝ちの程度と地上部の容積との関係

写真1 台木品種の皮剥ぎ後における肥大の違い

図2 皮剥ぎ部の木部縦断面構造と木部径測定部位

図3 皮接ぎによる台木樹勢指標と圃場台木試験の樹勢との関係

その他

  • 研究課題名:隔年交互結実に適した台木の選択
  • 予算区分 :作物対応研究「超省力園芸」
  • 研究期間 :平成 12 年度(平成8年 ~ 12 年)
  • 研究担当者:緒方達志、高原利雄、藤澤弘幸
  • 発表論文等:皮接ぎを利用したカンキツ台木樹勢の早期評価法,園芸学会雑誌,68(別2),216,1999.