高温の食用油に浸漬して行う効率的なクリの渋皮剥皮法

※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。

要約

加熱したコーンオイル中にクリの果実を短時間浸漬処理する渋皮剥皮法である。本法は従来の剥皮法と比較して短時間の処理で剥皮が促進されるため、クリの渋皮剥皮性育種における剥皮性評価法やクリを原料とする食品加工分野への利用が可能である。

  • キーワード:クリ、渋皮剥皮法、育種、評価法、食品加工
  • 担当:果樹研・遺伝育種部・ナシ・クリ育種研究室
  • 連絡先:成果情報のお問い合わせ
  • 区分:果樹(育種)
  • 分類:技術・普及

背景・ねらい

クリの渋皮を剥皮するには多大な労力と時間を要し、クリを加工するうえで大きな問題となっている。また、育種における渋皮剥皮性の評価は主に焼きグリを作成して行っているが、多数の個体の調査には時間と労力を要する。そこで簡便で効率的な渋皮剥皮法を開発することを目的とする。

成果の内容・特徴

  • 加熱したコーンオイルの中に鬼皮を除去したクリの果実を浸漬する方法(High- temperature Oil Peeling;以下HOP法とする。)によって渋皮を除去する剥皮法である。
  • ニホングリ、チュウゴクグリおよびこれらの雑種を含む品種、系統のいずれについても190℃で2分間程度処理することによって最も効果的に剥皮することが可能であった(図1および図2)。
  • 本法で処理した果実は焼きグリや蒸しグリと比較して短時間で剥皮を行うことが可能である(表1)。
  • 本法で処理した果実は渋皮のみが剥離されるため、剥皮後の果実表面に凹凸を残したまま仕上げることができる(図3)。
  • チュウゴクグリおよびニホングリとチュウゴクグリの雑種後代個体に適用した場合に極めて効果が高い。
  • 温度制御可能な市販の電気調理器を用いて処理することが可能であるため、特別な施設や装置を必要としない。

成果の活用面・留意点

  • 短時間の加熱処理で剥皮が促進されるため、大量の個体を扱う育種への利用が可能である。
  • コーンオイルの他ベニバナ油など他の植物油を使用しても同様の効果が得られる。
  • 剥皮された果実の表面がきれいなため食品加工分野などへの利用が期待される。
  • 処理した果実の表面に付着した食用油は食品用界面活性剤などを用いて除去することが可能である。

具体的データ

図1 加熱温度および加熱時間が渋皮剥皮性に及ぼす影響 図2 加熱温度および加熱時間が渋皮剥皮性に及ぼす影響(

 

表1 HOP法、蒸しグリおよび焼きグリにおける渋皮剥皮性

 

図3 HOP法によって剥皮したクリ「林1号」の果実

その他

  • 研究課題名:ニホングリの渋皮剥皮性の評価法および剥皮性に関する品種間差異の解明
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2001 ~ 2003 年度
  • 研究担当者:正田守幸、齋藤寿広、澤村豊、壽和夫
  • 発表論文等:1)正田ら (2002) 園学雑 70(別1):69