RT-PCRによるリンゴゆず果ウイロイドの診断

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要約

リンゴゆず果ウイロイドの全長が増幅されるプライマー組を設計し、これを用いたRT-PCRによる診断法を開発した。

  • キーワード:リンゴゆず果ウイロイド、プライマー、RT-PCR、診断
  • 担当:果樹研・リンゴ研究部・病害研究室
  • 連絡先:成果情報のお問い合わせ
  • 区分:果樹(病害虫)
  • 分類:行政・普及

背景・ねらい

リンゴのゆず果病は接ぎ木伝染性で、果実の商品価値を著しく低下させる病害であり、apple fruit crinkle viroid(AFCVd)により引き起こされる。ほとんどの品種では果実にしか病徴を現さないため、結実するまでは感染に気づかない。本病の防除には、予めAFCVdフリーと診断した穂木や苗木を用いることが不可欠であるが、生物検定法、電気泳動法では長期間を要したり、病原の樹体内濃度が極めて低いため、検定には多量の試料を要し、1回で実施できる検体数が限られていた。そこで、より高感度な診断法の開発を試みた。

成果の内容・特徴

  • 明らかになっているAFCVdの塩基配列をもとに診断用のプライマー組(5'-CGACGACGAGTCACCAGGTG-3'と5'-ACGAAGGGTCCTCAGCAGAG-3')を設計した。
  • リンゴの葉柄あるいは樹皮から抽出した全RNAを鋳型にRT-PCR法によりAFCVd特異断片の増幅を行った。
  • 果樹研究所リンゴ研究部保存のAFCVd14分離株を用いて試験を実施したところ、葉柄及び樹皮からの検出が可能であった(図1)。
  • 数種分離株については、葉柄及び樹皮で局在性が見られた(図2)ことから、確実に診断するには樹皮を用いることが望ましいが、葉柄を用いる場合は3~5葉を用いる必要がある。
  • 本法により2日以内に本ウイロイドの診断が可能である。

成果の活用面・留意点

  • 本法を用いることでより迅速に多数の試料の診断が可能である。
  • PCRではAmpliTaq Goldのようなホットスタート可能な酵素を用い、非特異なバンドの増幅を避ける必要がある。

具体的データ

図1 AFCVd感染樹からのRT-PCRによるAFCVdの検出

 

図2 AFCVdのリンゴ樹における局在性

その他

  • 研究課題名:リンゴの病原ウイロイド及びウイルスの遺伝子構造・機能の解析
  • 予算区分:バイテク〔病原遺伝子〕
  • 研究期間:1995 ~ 2000 年度
  • 研究担当者:吉田幸二、伊藤 伝
  • 発表論文等:1)特許取得「リンゴゆず果ウイロイド遺伝子」、日本、特許番号2931970号。
                         特許取得年月日:平成11年5月28日
                      2)T.Ito and K.Yoshida (1999) Acta Horticulturae 427:587-594