リンゴ摂取による血液中の中性脂肪減少、ビタミンC増加、腸内細菌叢改善
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要約
ヒト介入研究の結果、リンゴ摂取(1日1.5~2個:3週間)により、血液中の中性脂肪が平均21%減少し、中性脂肪値の高いヒトでは減少幅が大きく、低いヒトでは減少幅が小さいことから、リンゴには中性脂肪を正常化する作用がある。また、リンゴ摂取により血液中のビタミンCが平均34%増加し、善玉腸内細菌であるビフィズス菌の割合が15%増加し、ウエルシュ菌(悪玉菌)が消失もしくは減少する。
- キーワード:ヒト介入研究、リンゴ、中性脂肪、ビタミンC、腸内細菌叢
- 担当:果樹研・生理機能部・品質化学研究室
- 連絡先:成果情報のお問い合わせ
- 区分:果樹(栽培)
- 分類:行政・普及
背景・ねらい
国際的に見ると、日本人の果物の摂取量は極めて少ない。一方、アメリカ等では果物と野菜を1日400~800g摂取する運動が展開されており、ガンなどの生活習慣病を予防し、健康の維持・増進に成功している。世界各国の一人当たりの果物摂取量は、日本では129gで、欧米各国の半分以下であり、178カ国中117番目である(FAO統計1998)。また、家計調査ではもっと少なく、1日84.9g(総務庁2000)である。
なぜ、日本人は諸外国に比べるとあまり果物を食べないか。「果物は果糖が多く含まれているため、中性脂肪が増えるのが怖い」という誤った健康知識も理由の一つと思われる。そこで、リンゴ摂取(「ふじ」)による血液中の中性脂肪の変動等を検討した。
成果の内容・特徴
- 血液中の中性脂肪が21%減少:ヒト介入研究の成人被検者14名のうち12名で、血液中の中性脂肪の低下が確認された(図1)。リンゴ摂取前の中性脂肪の平均値は110mg/dlであったが、リンゴ摂取後87mg/dlとなり、21%有意に減少した(P<0.05)。
このことは、「果物は果糖が多いので中性脂肪を増やす」とする説をくつがえす結果である。むしろ、中性脂肪が多いヒトでは減少幅が大きく、少ないヒトでは減少幅が小さいことから、リンゴは中性脂肪を正常化するように働く。
- 血液中のビタミンCが34%増加:リンゴは、果物の中ではビタミンC含量はさほど多くない(3mg/100g)。にもかかわらず、血液中のビタミンC含量は、リンゴ摂取前の0.41mg/dlから、摂取後には0.55mg/dlと34%有意に上昇した(P<0.05)(図2)。
従って、リンゴには、ビタミンCを効率よく体内に取り込むのを助ける成分が含まれている。
- 腸内細菌であるビフィズス菌の占める割合が15%増加:善玉菌であるビフィズス菌の割合は、リンゴ摂取前の20.5%から35.9%へと、15%増加した(図3)。一方、悪玉菌であるウエルシュ菌は、テスト前に検出された6名すべてにおいて、消失もしくは減少した(P<0.05)。
成果の活用面・留意点
- 今回の結果は、果物のある食生活推進全国協議会(後援:農林水産省)が進めている「毎日くだもの200グラム」運動、及び、欧米で進められている5 A DAY運動(果物と野菜を1日400~800g)を科学的に裏付けるデータである。
具体的データ
その他
- 研究課題名:果樹由来の腸内有用菌増殖因子の同定及び動物性食品との相互作用の解明
- 予算区分:食品成分
- 研究期間:2000 ~ 2001 年度
- 研究担当者:田中敬一、朝倉利員、村松昇、鈴木康生、天野貴之、佐藤宏一(さとうクリニック)、
石川悦夫(江東微研)
- 発表論文等:1) 鈴木ら (2001) 園学雑 70(別2):371