中間台木方式によるモモ台木接ぎ木親和性の早期判定

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要約

秋季の芽接ぎと次春の切り接ぎにより育成したモモ中間台木苗の葉巻き上がり時期を調査することにより、台木品種・系統のモモに対する接ぎ木親和性の判定を1年余り短縮できる。

  • キーワード:モモ台木、接ぎ木親和性、中間台木
  • 担当:果樹研・遺伝育種部・核果類育種研究室
  • 連絡先:成果情報のお問い合わせ
  • 区分:果樹(育種)
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

モモ近縁種を用いた台木育成においては、接ぎ木親和性の判定に年月を要する。特に挿し木により自根台木を養成し接ぎ木を行う方式では、台木の養成に2年、接ぎ木苗の生育調査に1年を要するとともに、挿し木繁殖などに多くの労力を必要とする。そこで、自根を必要としない中間台木方式により、接ぎ木親和性を判定する方法を検討する。

成果の内容・特徴

  • 親和性を判定する対象となるモモ、ミロバランスモモ、モモと近縁種の種間雑種などの台木67品種・系統の1年生枝に9月上旬から下旬にかけてモモ「あかつき」の芽接ぎを行い、冬季に穂木を採取し、冷蔵庫で貯蔵した。4月中旬から下旬にかけて、芽接ぎされた芽を含む穂木を10cmの長さに切り、モモ台木に切り接ぎを行う(図1)。
  • 7月上旬より、約10日毎に、新梢の伸長停止および葉の巻き上がり程度を調査するとともに、生育の停止した10月下旬に苗木の樹高を調査する。
  • 葉の巻き上がり開始時期は、品種・系統により大きな差異が認められ、早いものでは7月上旬に始まり、遅いものでは落葉期まで認められない(図2)。新梢伸長停止時期にも同様に大きな差異が認められる。
  • 新梢伸長停止時期および葉の巻き上がり開始時期と樹高との間には有意な正の相関が認められ、開始時期が早い品種・系統ほど樹高が小さくなる傾向が顕著である(図3、4)。
  • 葉の巻き上がりは枯死に至る場合が見られることから、葉の巻き上がり開始時期が130日以前の品種・系統はモモとの間で接ぎ木親和性を有さないと判定される。
  • 以上のように、親和性判定対象を中間台木として用いる本方式により、接ぎ木親和性を1年間で判定することが可能である。

成果の活用面・留意点

  • モモの近縁種および種間雑種をモモ台木として利用を図る場合に、簡便な接ぎ木親和性判定法として有効である。

具体的データ

図1 接ぎ芽を含む中間台のモモ台への切り接ぎ 図2 新梢上の健全葉(左)と巻き上がった葉(右)

 

図3 葉の巻き上がり開始時期と接ぎ木苗の樹高の相関。 図4 新梢伸長停止時期と接ぎ木苗の樹高の相関。

その他

  • 研究課題名:モモわい性台木等育成のための種間交雑等の実施と雑種個体の獲得
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2000 ~ 2001 年度
  • 研究担当者:山口正己、土師 岳、八重垣英明
  • 発表論文等:1)山口ら (2002) 園学雑 71(別1):206