エチレン処理による硬肉モモの軟化とエチレン生成
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要約
硬肉のモモ果実はエチレンに反応して軟化する。またエチレン処理による軟化中は果実自身のエチレン生成が認められず、エチレン処理を中断すると軟化は直ちに停止する。
- キーワード:モモ、硬肉、日持ち性、エチレン処理、軟化、エチレン生成
- 担当:果樹研・遺伝育種部・核果類育種研究室
- 連絡先:成果情報のお問い合わせ
- 区分:果樹(育種)
- 分類:科学・参考
背景・ねらい
モモの硬肉は成熟しても果肉が硬くエチレン生成と軟化が認められない特異な形質で、日持ち性向上育種への利用が考えられている。しかしモモでは軟らかい果肉が好まれるため、この場合硬肉の果実を軟化させる手法の開発が必要となる。キウイフルーツの果実では1000ppmのエチレン処理による追熟が行われており、果実自身のエチレン生成の誘導を目的に処理時間などが設定されている。そこで1000ppmのエチレン処理が硬肉モモの軟化とエチレン生成に及ぼす効果を明らかにする。
成果の内容・特徴
- 硬肉品種の「おどろき」と「有明」に25°Cで1000ppmのエチレン処理を行うと、両品種ともエチレンに反応して速やかに軟化が始まる。この処理を3日間継続すると果肉硬度は急激に低下し、「白鳳」など溶質品種の果肉硬度と同程度になるが、軟化中は果実のエチレン生成が認められない(図1)。
- 「おどろき」と「有明」はいずれもこのエチレン処理を1日で中断すると軟化が直ちに停止する。また軟化が停止した果実のエチレン生成は8日後になっても認められない(図1)。
- 果実自身のエチレンの生成は、「おどろき」、「有明」ともにエチレン処理を4日以上継続するとごく微量に認められる(図1)。
成果の活用面・留意点
- エチレン処理を前提とすれば、硬肉は軟らかい果肉が好まれる生食用モモの品種育成に利用可能な形質である。
- 硬肉品種の果実に対するエチレン処理は、成熟してもエチレン生成と軟化が起こらない果実を外部から与えたエチレンのみで軟化させる操作となり、果肉硬度は処理時間の調整により制御可能である。
具体的データ

その他
- 研究課題名:硬肉性モモの軟化とエチレンとの関係
- 予算区分:交付金
- 研究期間:2001 ~ 2005 年度
- 研究担当者:土師 岳、八重垣英明、山口正己
- 発表論文等:1)土師ら (2002) 園学雑 71(別1):211