CiFT遺伝子の導入による早期開花性カラタチの作成

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要約

シロイヌナズナに早期開花性を付与するカンキツ由来の遺伝子CiFTをカラタチに導入し形質転換体を得た。得られた形質転換体のほとんどが、形質転換処理後1年以内に開花し、花芽誘導の解析や花及び果実における遺伝子機能解析のモデルとして利用できる。

  • キーワード:早期開花性、カンキツ類、遺伝子導入
  • 担当:果樹研・カンキツ研究部・遺伝解析研究室
  • 連絡先:成果情報のお問い合わせ
  • 区分:果樹(育種)
  • 分類:科学・参考

背景・ねらい

カンキツ類の幼若期は一般的には5年以上にわたり、この期間は開花・結実が見られない。このような世代時間の長さは、交雑や遺伝子導入などによる育種上、大きな障害となっている。一方、カンキツ果実で多量に発現しているカンキツの花成誘導遺伝子CiFTは、シロイヌナズナの花成誘導遺伝子FTと相同性をもち、FT遺伝子と同様にシロイヌナズナに早期開花性を付与することが示された。形質転換系が確立しているカラタチにCiFT遺伝子を導入することで、世代時間の短いカンキツ類育種素材の開発をめざす。

成果の内容・特徴

  • CiFT遺伝子は、カンキツcDNAカタログ化の中で公共データベースに登録されたESTクローンから、京都大学大学院のグループによりシロイヌナズナのFT遺伝子との相同性が発見されたもので、シロイヌナズナにおいてはFT遺伝子と同じように花成誘導性を示す。
  • カンキツ由来の遺伝子CiFTを、P35Sプロモーター下流に結合してアグロバクテリウム法によりカラタチに導入した。選抜された不定芽を接ぎ木して育成すると、得られた7個体の形質転換体のうち、6個体が形質転換処理開始後約6ヶ月から11ヶ月程で開花した(図1)。形質転換体の花は形態的に正常で(図2)、花粉稔性も確認される。
  • CiFTをプローブとしたノーザン解析により、非形質転換体と比較して形質転換体では、この遺伝子の転写物が多量に蓄積していることが分かる(図3)。また非常に頻繁に開花を繰り返す形質転換系統では転写産物の蓄積量が多い傾向がみられ、この遺伝子の発現量により形質転換体の開花性が制御される可能性が示唆される。

成果の活用面・留意点

  • 実生1年以内の幼樹で開花するため、花や果実形質に関与する遺伝子機能を解析するカンキツ類のモデル実験系として利用できる。

具体的データ

図1.CiFT導入カラタチの開花 図2.形質転換体の花

 

図3.CiFTをプローブとしたノーザン解析

その他

  • 研究課題名:FT遺伝子によるカンキツ培養系からの早期開花のモデル化
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2000 ~ 2001 年度
  • 研究担当者:遠藤朋子、島田武彦、大村三男
  • 発表論文等:1)遠藤ら (2002) 園学雑 71(別1):376