リンゴジベレリン20(GA20)酸化酵素遺伝子の単離と発現解析

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要約

ジベレリン生合成における重要な酵素の一つであるジベレリン20(GA20)酸化酵素遺伝子をリンゴより初めて単離した。本遺伝子はリンゴ未熟種子において多量に発現しており、その発現のピークは満開後40~80日に認められる。

  • キーワード:リンゴ、ジベレリン、生合成遺伝子、果実肥大
  • 担当:果樹研・生理機能部・形質発現研究室
  • 連絡先:成果情報のお問い合わせ
  • 区分:果樹(栽培)
  • 分類:科学・参考

背景・ねらい

植物ホルモンであるジベレリンはリンゴの栄養成長、開花結実、果実肥大等の様々な生理現象に関わっていると考えられるが、その生理作用の発現機構は未解明である。そのため、リンゴよりジベレリン生合成に関与する遺伝子を単離し、その発現解析を行うことによりリンゴの発育生理に関わるジベレリンの機能を解明する。

成果の内容・特徴

  • リンゴ「ふじ」より、数種類の植物より単離されているジベレリン生合成の重要な酵素であるGA20酸化酵素遺伝子と相同性が高い遺伝子を単離した。
  • ゲノムDNA配列との比較から、本遺伝子はシロイヌナズナより単離されたGA20酸化酵素遺伝子と同じ位置にイントロンを有する。その推定されるアミノ酸配列は、シロイヌナズナ由来の遺伝子と70%、インゲンマメ由来の遺伝子と61%の相同性を示す。推定されるアミノ酸配列中にLeu-Pro-Trp-Lys-Glu-ThrのGA20酸化酵素遺伝子に保存されている配列を有すること、数種の植物より単離されたGA20酸化酵素遺伝子の相同性が50~75%であることから、本遺伝子はリンゴGA20酸化酵素遺伝子である(図1)。同遺伝子のリンゴからの単離は初めてである。
  • 本遺伝子は、リンゴ未熟種子において多量に発現しており、未展開葉、成熟葉、新梢においてもわずかながら発現が認められる(図2)。
  • 未熟種子における本遺伝子の発現は、満開後40~80日の果実肥大の盛んな時期に多量に認められ、開花直後及び肥大後期には認められない(図3)。

成果の活用面・留意点

  • 本遺伝子は未熟種子で多量に発現しており、その発現は果実肥大初期の細胞分裂期には見られず、その後の果実肥大期に発現が見られることから、この時期に種子で生成されたジベレリンがリンゴの果実肥大に関与していると推察される。
  • リンゴにおけるジベレリン生合成の人為的制御を目的とした遺伝子導入に使用できる。

具体的データ

図1 リンゴジベレリン20酸化酵素遺伝子の塩基配列および予想されるアミノ酸配列

 

図2 ノーザンブロットによるジベレリン20酸化酵素遺伝子の発現解析

 

図3 果実成長と種子におけるジベレリン20酸化酵素遺伝子の発現の季節変化

その他

  • 研究課題名:ジベレリン生合成酵素遺伝子の単離および耐性遺伝子の検索
  • 予算区分:先端技術開発研究
  • 研究期間:1997 ~ 1999 年度
  • 研究担当者:草塲新之助、本多親子、村上(嘉納)ゆり子
  • 発表論文等:1) Kusaba et al. (2000) Acta Hort. 538:605-608.
                      2) Kusaba et al. (2001) J. Exp. Bot. 52:375-376.